沈黙の引退、国鉄形「EF66」はなぜ人気があるのか 流線型の貨物用電気機関車、ブルトレでも活躍

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中央がEF66形。両側の機関車と比べ存在感がある(画像:キヨキヨ/PIXTA)

2022年3月のダイヤ改正を機に、JR貨物で活躍していたEF66形27号機が引退した。EF66形27号機は、国鉄形のEF66のうち、最後まで現役車両として使用されていたもので、登場から半世紀近く活躍した。

EF66は国鉄時代に貨物用の機関車として造られたのだが、一部は旅客用に転じて寝台特急のブルートレインも牽引したことでも知られている。見た目の良さもあって、ファンの間から絶大な人気を誇っていた。

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「格好いい」機関車になった理由

EF66は1966年にEF90として試作機が登場、1968年からEF66として量産化がはじまった。同じ時期に造られた国鉄形電気機関車では、箱形のデザインで造られているのが基本だが、EF66は流線形のスタイルで造られ、ほかの国鉄形電気機関車とは見た目の良さが際立っている。ではなぜ、EF66は格好良く造られたのだろうか。

その理由は「スピード」である。EF66に与えられた使命は貨物列車の高速化で、「カッコいい」姿は速度向上に由来したものだ。当時の国鉄形機関車では、踏切事故の対策として運転台の位置を上げ、万一の際に乗務員を保護するという考え方が実践されていた。EF66と同時期に造られた国鉄形機関車を見ると、フロントガラスに相当する前面の窓が細長いが、これは運転台の位置を高くしたことが理由となる。

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さらにEF66の場合は、前面の窓の下を膨らませて運転台の位置を後ろに下げている。これにより保安度を上げているほか、運転席の位置から直下の線路を見づらくすることで、運転時の疲労を軽減する効果を狙っている。

デザイン的には、前面の窓を高い位置に持っていくと、前面の下のほうが間延びした感じになってしまう。だが、EF66の場合は全体的に丸みをもたせたうえに、前照灯と尾灯は縦に配置し、両端に配置された前照灯と尾灯の間に装飾を施すことで、間延びした印象を感じさせない。高速で走るという機能からはじまり、デザインを整えたら格好良くなってしまったというわけだ。

丸みを帯びたデザインは同時期に造られたディーゼル機関車で実績があり、1964年に登場した新幹線の救援・工事列車用の911や、1965年に登場した除雪用のDD53で採用例があるのだが、EF66では911やDD53の流れを受けて、さらにデザインが進化している。

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