出井伸之さんが84歳まで仕事を続けられた理由 サラリーマンこそ冒険者、会社は挑戦できる場

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6月2日に84歳で亡くなった出井伸之氏が伝えたかった「キャリア論」とは?(写真:小学館)
ソニーグループは6月7日、元会長兼CEOの出井伸之氏が6月2日に亡くなったと発表。84歳で亡くなるまでベンチャー企業「クオンタムリープ」の会長を務めた出井氏は、ソニーでの経験をもとに「サラリーマンこそ冒険者になれる」と説いていた。今年春に発売された最後の著作『人生の経営』から出井氏が伝えたかったキャリア論を一部抜粋・編集してお届けする。
【編集部より】出井さんのご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げますとともに、心からご冥福をお祈りいたします。

「なぜソニーはコンピュータをやらないのか」

CDの開発が終わった後、こんな出来事がありました。CDのセールスのため、大阪にある家電量販店を訪問したら、「お宅のボスが来ていますよ」とお店の人に言われました。

見ると、当時ソニーの会長だった盛田(昭夫)さんが、量販店の偉い人に責められているんですよ。そばに行ってどんな話かを聞いてみたら、

「なぜソニーはコンピュータをやらないのか? ソニーこそやるべきじゃないのか? やらないのはおかしい」

とまくし立てられていました。その様子は今思い出しても噴き出すくらいに面白かった。見るに見かねて、僕は助け船を出しました。

「いやあ、コンピュータなんて、作るのは簡単ですよ。ソニーがやれば、すぐにできます」と言ってのけたんです。

盛田さんは、突然、出井が現われて、「コンピュータなんて簡単だ」と、いつもの調子で話し出したから、心底、驚いたような表情で僕の方をまじまじと見ました。

「こいつ、また千三つ(千のうち三つしか本当のことを言わない、大風呂敷を広げる人)か?」

そんな顔でした。その表情を思い出すと、今も懐かしい気持ちでいっぱいになります。

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