日本経済が世界から遅れる原因作った「真犯人」 なぜこんなにも新興企業が少ないのか

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国民の生活水準を向上させるためには、成長性の高い中小企業を継続的に創出していくことが不可欠だ。1980年代から1990年代にかけてのアメリカでは、設立5年未満の企業の参入と、効率の悪い老舗企業の閉鎖によって、就業者当たりの製造業生産高の成長率60%という驚くべき結果がもたらされた。

一方、1980年以降、アメリカの新興企業の起業数が鈍化したときに何が起きたかを考えてみていただきたい。2015年までに、就業者1人当たりの生産高は1980年の起業数であったときと比較して3%低くなり、平均家計所得は1600ドル低下した。長年にわたる所得喪失の総額は何倍にも膨らんだ。

設立後最初の10年間の成長が低調

残念ながら、日本では高成長している中小企業の数があまりにも少ない。それが、実質世帯所得(価格調整済み)が1995年以降低迷を続けている理由の1つである。日本には数多くの中小企業があるのは確かだが、創立後最初の10年間の成長はOECD諸国の中で最も低調で、老舗中小企業の数がOECD諸国の中で最も多い。

おそらく最大のハードルは、意欲的な若い企業が事業拡大に必要な融資を受けられないことだろう。また、岸田首相が挙げた技術や人的資本という2つの問題も、中小企業の成長を妨げている。

しかし残念ながら、岸田首相もスタートアップを語るとき、VC出資企業の魅力に魅了されすぎているようだ。例えば、岸田首相のプランを推進するため自民党内に結成されたスタートアップ議連は、2027年までにVC投資額を10倍の10兆円(770億ドル)にすることを目標としている。このようなVC投資は魅力的だが、VCから投資を受けた企業だけが注目されるべきではない。

3月には経団連がほぼ同じ内容の提言を出しているが、その内容はシリコンバレー型ベンチャーに終始している。しかもスタートアップ議連の提言では、スタートアップの企業数を10倍に増やすとしている。

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