「正直不動産」にどこかホッとしてハマる人の目線 NHKドラマが描く、心の安定得るしんどくない現実

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今クール一人勝ちとも言われるNHKドラマ「正直不動産」の魅力とは?(画像:NHK「正直不動産」公式サイトの5月24日放送予告動画より)

今シーズンのおすすめドラマはどれ? そう聞かれたら、迷いなく一択である。ドラマ10「正直不動産」(NHK 火曜夜10時〜)をおすすめする。

(※ここから先は一部ネタバレを含みますので、これから初めてご覧になる予定のある方はご注意ください)

口のうまさで営業成績をあげてタワマン生活を謳歌していた登坂不動産の営業・永瀬財地(山下智久)はあることがきっかけで急にうそがつけなくなってしまう。ばかがつくほど正直なセールスによって、これまでとは違う風景や人間関係が見えてきて……。

家の売買をめぐるお仕事もの+ヒューマンストーリーはキャラクターが明確で、テンポがよく、勧善懲悪でストレスなく観ることができる。毎回、ラストに流れる超絶やわらかボイス・小田和正によるテーマ曲「so far so good」(コーラスに松たか子、和田唱(トライセラトップス)が参加しているそうです)で心が浄化される。

番組公式サイトの制作統括のコメントによると“放送開始から1カ月、問い合わせの数はすでに2000件を超え、総合視聴率(リアルタイム&録画)は10%以上を記録。NHKプラスも、第1話が新記録(朝ドラ・大河をのぞくドラマの歴代最高値)を叩き出して以来、その数値を毎週維持し続けております”とのこと。放送中に二度も“連続再放送”を行い、ファンを増やしている。

いまどき珍しい真っ直ぐなドラマ

なぜ、じわじわと人気が増しているのか。それは「正直不動産」はいまどき珍しい真っ直ぐなドラマだからだ。

最近のドラマは物足りない。ミステリーや刑事ものか恋愛ものばかり。それもストーリーがしっかりしていてテーマ性やメッセージ性があればまだしも、刹那的な刺激に走ったり、考察ドラマという名のもとに肝心なところをはぐらかしたりするようなものばかり。バラエティーなのかドラマなのかよくわからないものが増えるなかで「正直不動産」は、凝った料理もいいけれどやっぱり炊きたての白いご飯がいちばん、みたいな感じのドラマなのだ。

正直、最初は「正直不動産」なんてタイトルだし、主人公の永瀬がうそをつけなくなるきっかけはファンタジーである(アパート建設予定地の祠を壊したことでうそがつけなくなってしまう)ことも手伝って、これもまたいまどきのバラエティーっぽい中身のないドラマなのかと警戒していた。だが見始めたら、その先の構成が盤石で、いまや、今シーズン、いちばんの愉しみである。

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