自分たちで守れ? 台湾有事でも派兵しない米国 日本が安保戦略で「ハシゴ外し」のリスクも

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2022年5月3日、米上院公聴会で証言するマーク・ミリー統合参謀本部議長(写真・2022 Bloomberg Finance LP)

アメリカ軍制服トップが、「台湾は防衛可能な島」として、「台湾有事」が発生してもアメリカ軍は派兵しない、ウクライナ方式の「代理戦争」の検討を示唆した。アメリカが直接手を汚さないことで、イラク、アフガン戦争の失敗の再現や核保有国の中国との全面衝突というリスクを回避できる。同時に、直接参戦しなくてもアメリカ軍産複合体の莫大な利益になる「一石二鳥」の方法だ。

アメリカの「戦略的明確化」が侵攻を招いた?

ロシアのウクライナ侵攻から間もなく3カ月。当初は電撃的勝利も予想されたロシア軍が苦戦を強いられている理由の1つとして、アメリカがウクライナに大量の先進兵器など軍事支援を行うことによって「ロシアvsウクライナ」戦争ではなく「ロシアvsアメリカ」の代理戦争になっていることが挙げられる。

アメリカのバイデン大統領は2021年12月8日ホワイトハウスで記者団に対し、アメリカ軍のウクライナ投入は「検討していない」と発言した。その理由についてバイデンは、①ウクライナは同盟国ではない、②ロシアは核大国という2点を、別の機会に明らかにした。

こういった事前に軍事対応を明らかにする「戦略的明確化」が、ロシアのプーチン大統領に軍事侵攻を決断させたのではないかとして、アメリカ議会をはじめ西側識者から強い批判を浴びた。

ウクライナ戦争では岸田文雄首相が、「力による現状変更を許すと、アジアにも影響が及ぶ」として、ウクライナ情勢が台湾有事に連動する危機感を煽っている。ウクライナ戦争と台湾情勢を単純に重ね合わせるのは、あまりにも近視眼的な思考だと思う。

ただ、ウクライナ情勢がアメリカと中国の台湾への対応にどんな変化をもたらすか、北京とワシントンも台湾をつねに意識しながら情勢をウオッチしているのは間違いない。

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