日本人は年功序列賃金の弊害をよくわかってない 単に歳を重ねただけで生産性が上がるのだろうか

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日本の報酬体系は、生産性の向上を妨げている面が大きい。

第1の問題は、年功序列的な賃金は、労働の成果に応じる報酬になっていないことだ。

図表1に見るように、55~59歳の賃金は19歳未満の2.3倍であるが、単に歳を重ねただけで、生産性がこれほど上がるとは考えられない。

むしろ、歳をとることによって、時代の変化に対応できなくなる危険のほうが大きいだろう。

それにもかかわらず日本の賃金体系で賃金が年齢とともに上昇するのは、歳をとれば管理職の地位につくという、それだけの理由による場合が多いだろう。

年長者が意思決定権を持つことで新事業が阻害される理由

そうした人たちが意思決定権限を持つことによって、企業が新しい事業に取り組むことが阻害される。

なぜなら、新しいものの導入は、年長者の地位を危うくするからだ。

本来であれば新しい技術体系に応じて新しいビジネスモデルを導入する必要があるのに、日本企業は古い技術体系にしがみつこうとする。そして、変化する技術体系に適切に対応することができない。

ましてや、新しい変化を世界に先駆けて実現することなど、ほとんど不可能だ。

また、年功序列的な報酬体系は、能力や生産性に応じて賃金を支払うことを難しくしている。

このため、若い人材が持つ専門知識が適切に評価されない。

日本の企業の多くが新しい社会状況にうまく適応できない大きな原因が、ここにある。

デジタル化の遅れということが言われるが、それは、こうした傾向の1つの現れに過ぎない。日本の報酬体系が、さまざまな変革を阻害していると考えざるをえない。

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