上海のワイヤーハーネス工場「操業再停止」の痛手 基幹部品の供給止まり、テスラの生産に影響も

✎ 1〜 ✎ 900 ✎ 901 ✎ 902 ✎ 最新
拡大
縮小
ワイヤーハーネスは自動車の「神経」と呼ばれる基幹部品だ(写真はアプティブのウェブサイトより)

5月8日、上海市内にある自動車向けワイヤーハーネスの工場で、従業員から新型コロナウイルスの感染者が確認された。工場では直ちに外部との出入りを遮断する封鎖措置が採られ、生産はストップした。

このワイヤーハーネス工場は、アメリカの自動車部品大手のアプティブが上海市内に3カ所持つ生産拠点の1つだ。財新記者の取材に対し、アプティブは上述の事実を認めた。

上海市では、3月下旬から新型コロナの流行を封じ込めるためのロックダウン(都市封鎖)が続いている。市政府は経済への打撃を緩和するため、操業を優先的に再開すべき企業を指定して支援。アプティブはその第1陣のリストに入り、ワイヤーハーネス工場は4月29日に再稼働していた。しかし、わずか10日で再び生産停止に追い込まれた格好だ。

アプティブの前身は、アメリカ自動車大手のゼネラルモーターズ(GM)の部品事業部門が1990年代に分離独立したデルファイ・オートモーティブ・システムズだ。同社は2017年にパワートレイン事業を切り離した後、社名をアプティブに変更した。

テスラ車の6割近くが上海製

業界関係者によれば、アプティブの上海ワイヤーハーネス工場の製品納入先は、アメリカのEV(電気自動車)大手テスラの上海工場やGMの中国合弁会社の工場などだ。

ワイヤーハーネスは自動車の基幹部品の1つであり、車載電子機器の制御やデータ伝送などを媒介する「神経」の役目を担っている。それだけに、アプティブの工場の生産停止は、納入先のテスラやGMに直接的な痛手を与える可能性がある。

例えば、2022年1~3月期に合計31万台のEVを出荷したテスラは、その6割近い18万台が上海工場製だった。上海市のロックダウンに伴い、現地工場は3月末にいったん生産を停止し、4月19日に再稼働した。だが、部品調達や完成車の輸送がボトルネックとなり、生産ラインはまだフル稼働には戻っていない。

本記事は「財新」の提供記事です

仮にアプティブのワイヤーハーネス工場の操業停止が長引けば、その影響がテスラに波及するのは必至だ。

「わが社は目下、上海市政府および製品納入先の顧客と緊密に対応を協議している。(封鎖措置解除に)必要な条件をクリアでき次第、早急に生産を再開したい」。財新記者の取材に対し、アプティブはそうコメントした。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は5月10日

財新 Biz&Tech

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ザイシン ビズアンドテック

中国の独立系メディア「財新」は専門記者が独自に取材した経済、産業やテクノロジーに関するリポートを毎日配信している。そのなかから、日本のビジネスパーソンが読むべき記事を厳選。中国ビジネスの最前線、イノベーションの最先端を日本語でお届けする。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT