蜜月一転「自民が維新を痛烈批判」の裏にある謀略 安倍・菅政権と様変わり、維新内対立もあおる

拡大
縮小

批判合戦の発端は、茂木幹事長が大型連休最終日の5月8日、大阪市内での街頭演説で、「身内に甘い政党だ」「もう勢いがない」などと声高に維新攻撃を展開したことだ。

茂木氏はウクライナ危機での橋下氏の言動などを念頭に「維新の創設者はロシア寄りの発言を繰り返している。維新の国会議員は間違っていると言うべきだが、身内に何も言えない」と痛烈に批判した。

これに対し松井・維新代表は翌9日、「橋下氏は民間人だ。与党の幹事長が言論弾圧しろというのか。薄っぺらい幹事長だ」と応戦。ただ、茂木氏の維新は勢いがないとの指摘は、弱点を突く要素でもあった。維新にとって橋下氏の一連の言動が、「党勢拡大へのネックとなりはじめている」(自民幹部)のは否定できないからだ。

ここにきて、橋下氏が民放テレビ各局の情報番組や自らのツイッターなどで繰り返す主張には、国民からの反発や疑問が拡大している。5月に入ってのNHKの最新の世論調査でも、政党支持率は立憲5.0%、維新3.5%で、どちらも低迷する中でも、維新の地盤沈下が目立っている。その背景に、橋下氏の存在があるとみる向きも少なくない。

参院選比例代表での投票先では、多くの調査でなお維新が立憲を上回っているが、こちらも昨秋の衆院選時と比較すれば減少傾向が目立つ。だからこそ、茂木氏も「維新を叩くチャンス」と判断し、“橋下発言”を攻撃材料にしたとみられる。

安倍氏、菅氏の周辺は「反主流派への牽制」と受け止め

茂木氏の発言には、維新批判を自民内の権力闘争とも絡める思惑もにじむ。岸田政権の党内権力構造は、岸田、麻生、茂木3派閥が主流派で、菅グループと二階派、森山派などが反主流派との位置づけ。最大派閥の安倍派は、表向きは主流派だが、政権運営などでの岸田首相と安倍氏の確執もあって、ひそかに反主流派との連携も模索しているとされる。

このため、維新とのパイプの太い安倍、菅両氏の周辺は、茂木氏ら主流派首脳の維新批判を「反主流派への牽制」と受け止めている。それだけに、有権者に維新の弱点をアピールする主流派の手法は、「極めて狡猾」(自民長老)でもある。

こうした不穏な動きを踏まえてか、維新を率いる松井氏も連休明けの10日、大阪市役所で記者団に対し、「われわれは茂木さんの言うようにアリンコみたいなもん。大阪でも維新の勢いがあるなんて、思ったことはない。アリンコらしく地べたをはいずって頑張ります」と皮肉も交えながら白旗を掲げるそぶりも見せた。

次ページ橋下氏が絡む「上海電力」問題がネットで炎上
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT