国際文化会館とAPI「合併」で目指す新境地の展望 船橋API理事長、近藤・国際文化会館理事長に聞く

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国際文化会館の近藤正晃ジェームス理事長(右)と、APIの船橋洋一理事長(撮影:尾形文繁)
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戦後日本の民間国際交流を牽引してきた国際文化会館と、日本を代表する独立系シンクタンクのアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)が今年7月に合併し、新たな歩みを始める。世界で活躍する日本の指導者の育成にも力を尽くしてきた国際交流団体と、政府の政策の検証と政策提言を担ってきたシンクタンクの合併の羅針盤はどこに針を向けているのか。国際文化会館の近藤正晃ジェームス理事長と、APIの船橋洋一理事長へのインタビューを前後編でお届けする。

国際文化会館の「原点回帰」

――まず、合併の目的と意義についてお聞かせください。

近藤正晃ジェームス(以下、近藤):ひとことで言うと「原点回帰」です。国際文化会館(以下、会館)は今年で設立70周年を迎えます。敗戦後間もなくの設立で、そこには、数年前まで戦争していたアメリカと、単なる和解や相互理解といった次元を超えた、平和と繁栄のパートナーシップを構築するのだという大きな志がありました。

世界は「冷戦」の時代を迎え、新しい国際秩序が生まれようとする中で、日本という国がどのような立ち位置でアメリカ、アジア、世界と対峙、あるいは協調していくべきか、その方向付けをしていくことが重要な仕事で、当時の世界的なリーダーの方々を招いて講演会を実施したり、日本のリーダーとの対話や交流を後押ししたりしていました。

ひるがえって今般の世界の情勢に目を向けると、イギリスのEU離脱、トランプの登場、中国の台頭、ロシアのウクライナ侵攻など、冷戦終結後の国際秩序が大きく揺らいでいます。そうした中で、今後10年、20年先を見据えて、日本の立ち位置を見直さなければならない時期に来ています。

しかし、そのようなプログラムは会館だけではできません。今回の合併の意義と目的は、APIという最適なパートナーとともに、今の日本にとって最も重要な、世界の中での立ち位置を考える知の拠点を作ることです。それが、会館にとっては「原点回帰」なのです。

船橋洋一(以下、船橋):APIは今年設立10周年です。APIはシンクタンクですが、「研究所」とは名乗りませんでした。それは、研究の成果を政治過程に織り込んでいく政策起業力を重視したからです。その営みを「イニシアティブ」という言葉で表現しました。設立当初は、スケール不足を補うべくスピードでモノを言わせるといったところもありました。

10周年を機に次の10年のビジョンを考えたとき、アジア太平洋地域を代表するグローバル・シンクタンクへの成長を目指したいと思っていました。また、次の世代にリーダーシップをバトンタッチし、裾野の広い影響力の山脈をつくりたいと考え、準備を進めてきました。昨年の春、合併の話が両組織間で持ち上がり、「次の10年」、そして「さらに先の10年」に向け、APIをイニシアティブからインスティテューションへとよりプロフェッショナルに、より分厚く、より安定させていくためには最良の選択だと判断し、合併を決断しました。

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