中国DJI、ロシアとウクライナでドローン販売中止 軍事転用が招いた「事実誤認」の火の粉を憂慮

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DJI製ドローンは民生用だが、世界中の紛争地域で偵察などの軍事目的に転用されている(写真は同社ウェブサイトより)

民生用ドローン(無人機)世界最大手の中国の大疆創新科技(DJI)は4月26日、ロシアとウクライナにおける製品の販売やアフターサービスをすべて一時中止すると発表した。その理由について同社は、コンプライアンス(法令順守)要件の見直しを行った結果だとしている。

DJIのドローンは民生用として販売されている。ところが、ロシアとウクライナの戦争では、両軍ともにDJI製品を偵察活動に頻繁に利用しているのが実態だ。同社の担当者は財新記者の取材に対して、「今回の見直しは中国の輸出管理法と(輸出先の)各国の法令に基づき、自社のコンプライアンス状況を自主的にチェックして決めた」と説明した。

中国の輸出管理法は、海外に輸出される製品、技術、サービスなどに対する規制措置を定めている。具体的には「両用品目」、「軍用品」、「核物質」、「国家の安全保障と利益に係わるその他の品目」、「不拡散などの国際的義務に係わる品目」などを対象に、輸出管理が実施されている。

「ゲリラ部隊の空軍」との異名も

上記のなかの両用品目とは、民生用と軍事用の両方に利用できたり、(輸出先の)軍事力強化に寄与したりする可能性がある製品、技術、サービスを指す。なかでも大量破壊兵器およびその輸送手段の設計、開発、製造、使用に寄与しかねない両用品目は、輸出が厳しく規制されている。

そんななか、DJIのドローンはこれまでグレーゾーンだった。同社は自社製品を民生用と強調するが、現実には世界中の軍事紛争地域のほとんどでDJI製ドローンが目撃されている。同社製品のマニアの間では、DJIのドローンは「ゲリラ部隊の空軍」と呼ばれているほどだ。さらに、正規の軍隊でもDJI製品が幅広く使われているのは公然の秘密だ。

本記事は「財新」の提供記事です

ロシアのウクライナ侵攻が世界の注目を集めるなか、海外のSNS(社交サイト)上にはDJIが戦争に荷担していると非難する声もある。同社としては、外国の紛争のとばっちりには巻き込まれたくないのが本音だろう。

「これまでも繰り返し述べてきた通り、DJI製品はすべて民生用として設計され、軍事規格には対応していない。わが社があたかも戦争を支援しているかのようなSNS上の書き込みは、完全な事実誤認だ」。DJIは声明のなかでそう訴えている。

(財新記者:方祖望)
※原文の配信は4月27日

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