「悪い円安」を導いてしまったアベノミクスの末路 インフレ期待を醸成させるつもりが目論見外れ

印刷
A
A
20年ぶりの円安は、わたしたちの生活にはどのような影響があるのでしょうか(イメージ:Ystudio/PIXTA)
20年ぶりの円安が進んでいます。輸出主導型から消費主導型に経済構造が変化した日本を、ロシアのウクライナ侵攻による資源高が襲う構図です。価格転嫁や賃上げが不十分な状況で進む「悪い円安」の懸念も膨らむなか、わたしたちの生活にはどのような影響があるのでしょうか。経済評論家、加谷珪一さんの著書『国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶』から解説します。

日銀が続ける量的緩和策の実態

アベノミクスは経済学的にはどのようなメカニズムだったのでしょうか。アベノミクスの中核となっていた政策は、日銀による量的緩和策です。

「幻冬舎plus」(運営:株式会社 幻冬舎)の提供記事です

量的緩和策は、日銀が積極的に国債を購入することで、市場にマネーを大量供給し、市場にインフレ期待(物価が上昇すると皆が考えること)を発生させるというものです。期待インフレ率が高くなると、実質金利(名目金利から期待インフレ率を引いたもの)が低下することになりますから、企業が資金を借りやすくなり、設備投資が伸びることが期待されます。

物価を上げて経済の起爆剤にしようとしたが…

アベノミクスで想定された波及効果は図の(D)に示しましたが、インフレ期待が生じると(1)、企業が設備投資を増やし(2)、設備投資の増加が所得と消費の拡大を促す(3)という流れです。日本では不景気が長引き、デフレと低金利の状態が続いていました。名目上の金利は、これ以上引き下げることができないので、逆に物価を上げて、実質的に金利を引き下げ、これを経済の起爆剤にしようと試みたわけです。

(図表:幻冬舎plus)

実質金利の低下によって設備投資(I)を促し、これを消費拡大につなげるという施策ですから、設備投資が増える理由が違うだけで、波及するメカニズムは財政出動や小泉改革とまったく同じです。唯一、アベノミクスが異なるのはインフレ期待による直接的な消費拡大も期待されていたことでしょう。

市場にインフレ期待が生じると、株価や不動産価格が上がる可能性が高くなります。実際、アベノミクスによって株価と不動産価格は上昇し、一部では投資で利益を得た富裕層が消費を増やすという効果も見られました(資産効果)。全体における比率としてはそれほど高くはありませんが、直接的に消費(C)を増やす作用も想定されていたわけです(※)。

次ページ円安で輸入物価が上がり、生活必需品も値上がりした
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
平気で「おにぎり」を買う人が知らない超残念な真実
平気で「おにぎり」を買う人が知らない超残念な真実
三井物産、肝煎りの「ロシアLNG」で正念場
三井物産、肝煎りの「ロシアLNG」で正念場
工場が消える!脱炭素が迫る最後の選択
工場が消える!脱炭素が迫る最後の選択
ファミマと伊藤忠が狙う「セブン-イレブン1強体制」打破の勝算
ファミマと伊藤忠が狙う「セブン-イレブン1強体制」打破の勝算
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
  • 新刊
  • ランキング
東洋経済education×ICT