「奨学金480万円」女性が田舎の親に"今思うこと" 「借りられるものは借りておけば?」が危険な訳

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マネーリテラシーの低い親のもとで育ち、480万円の奨学金を借りて大学に進んだ女性。返済し終えた今、思うこととは?(写真:kazuma seki/GettyImages)
これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。
たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。
そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。

「うちの地元は大学に進学する人なんていないぐらいの田舎。当然、私の両親や祖父母も中卒か高卒で、大学進学なんて考えられない家系でした」

今回話を聞いたのは、都内で不動産関係の会社に勤務する中島恵さん(仮名・36歳)。明るく、ざっくばらんな語り口が印象的な人だ。

自営業で借金癖のあった父親

中島さんが通っていた高校は、中部地方の某県にある、県内で5番目ぐらいの県立高校。クラスメイトの多くが大学進学を考えていたが、中島さんの場合は事情が違った。

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「私の父は建設業の自営業者なのですが、雪国なので冬場は仕事が大幅に減ります。昔からあまりお金の計算がうまくないこともあって、結果、収入がない時期に家計を支えるため借金を重ねていました。

だから、家計的には大学に行ける状況ではなかったのですが、私自身は成績もそれほど悪くなくて、父を見ていて『やっぱり大学に行かないと、将来いい仕事に就けないな』と思っていて。

学校の先生に相談したところ、『奨学金を借りてでも、大学に行ったほうがいい』と言われたので、奨学金を借りて進学することを決意しました」

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