「誇りに思う」聾(ろう)の若者が堂々と語る理由 聾者の高校生と自閉症の兄がいる弟たちの挑戦

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2020年、弁護士会館の掲示板に載せた「意見広告」。障害者と書かれた紙の下のあたりがシュレッダーにかけられている(ヘラルボニー社提供)
インクルーシブ(inclusive)とは、「全部ひっくるめる」という意。性別や年齢、障害の有無などが異なる、さまざまな人がありのままで参画できる新たな街づくりや、商品・サービスの開発が注目されています。
そんな「インクルーシブな社会」とはどんな社会でしょうか。医療ジャーナリストで介護福祉士の福原麻希さんが、さまざまな取り組みを行っている人や組織、企業を取材し、その糸口を探っていきます。
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今年のアカデミー賞で作品賞を受賞した映画『コーダ あいのうた』の影響で、聾(ろう)者や聾者の文化(以下、聾文化)が注目されている。聾者とは、声でなく手話でコミュニケーションを取る人で、聾文化とともに生活している。

2月、「第41回全国高校生読書体験記コンクール」(公益財団法人一ツ橋文芸教育振興会主催)で応募総数8万3500編あまりの中から、トップの文部科学大臣賞に選ばれた作品も、聾文化を取り上げたものだった。

体験記のタイトルは「聾者は障害者か?」

――タイトルは「聾者は障害者か?」。

この体験記を書いた筑波大学附属聴覚特別支援学校高等部3年生(千葉県)の奥田桂世(けいよ)さん(18歳、受賞当時)は聾者で、タイトルは自分自身のことを含めて表現している。

私は若い人が投げてきた直球の問題提起に大きな衝撃を受け、ぜひこの連載で取り上げたいと思った。

体験記を書いた奥田桂世さん(画像:一ツ橋文芸教育振興会ホームページから)

まず、奥田さんの体験記の概要を、文章を抜き書きしながら紹介する(⋆1)。この読書体験記コンクールでは、本の感想文を書くだけでなく、本の内容にどのような影響を受けたかをつづることになっている。

奥田さんは、祖父母も両親も妹も聾者という家庭で育った。乳幼児期から高校まで聾学校に通っていたため、幼少期は音が聞こえる人(以下、聴者)のことを「普通ではない」と思っていたそうだ。

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