「コロナ再流行」で中国の自動車産業に大打撃 上海VWや蔚来汽車など工場の操業停止相次ぐ

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新興EVメーカーの蔚来汽車は、キーパーツの供給不足で完成車の組み立てを継続できなくなった(写真は同社ウェブサイトより)

中国の自動車産業のサプライチェーンが厳しい試練に直面している。新型コロナウイルスの局地的流行が拡大し、中国各地で防疫措置が厳格化。自動車産業で働く多くの人々が自宅や団地の外に出られなくなったり、物流を支える地域間の高速道路が封鎖されたりしているためだ。

なかでも打撃が大きいのが、中国有数の自動車産業の集積地で、3月末からロックダウン(都市封鎖)が続く上海だ。

「主力工場の1つで生産がストップしている。工場内に詰めている数百人を除いて、すべての従業員が自宅待機になっている」。乗用車大手の上汽VW(訳注:ドイツ自動車大手のフォルクスワーゲン[VW]と中国の国有自動車最大手の上海汽車集団の合弁会社)の関係者は4月10日、財新記者の取材に対してそう明かした。

その前日の4月9日には、新興EV(電気自動車)メーカーの蔚来汽車(NIO)が工場の一時操業停止を発表した。同社の主力工場は安徽省合肥市にあるが、上海市や江蘇省、吉林省などにある部品サプライヤーが相次いで操業停止に追い込まれ、完成車の組み立てを継続できなくなった。

ワイヤーハーネスやESPが供給不足に

そのほかの自動車メーカーでも、完成車の組み立て工場の操業停止や減産が相次いでいる。1台のクルマは数万点の部品で構成されており、キーパーツが1つでも足りなければ完成させることができない。自動車産業の物流業務に携わる関係者の1人は、特に影響が大きいキーパーツとしてワイヤーハーネスとESP(車両横滑り防止装置)を挙げ、次のように語った。

「アメリカ部品大手のアプティブのワイヤーハーネスと、ドイツ部品大手のボッシュのESPは、どちらも上海工場での生産が滞っている。そこに物流の混乱が重なり、取引先の複数の自動車メーカーが減産に追い込まれた」

本記事は「財新」の提供記事です

中国国家統計局のデータによれば、上海市の自動車生産台数は中国全体の11%を占める。自動車産業のサプライチェーンは裾野が広く、多くの企業がジャストインタイム方式で生産を行っている。このためキーパーツの供給不足や物流停滞の影響が、広範囲に短期間で波及しやすい。中国の4月の自動車生産は大きく減少し、販売も落ち込む可能性が濃厚だ。

(財新記者:余聡)
※原文の配信は4月11日

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