手放せぬ既得権益「文通費改正」与野党合意の欺瞞 国会議員の「第2の給与」、使途公開など先送り

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文通費の問題がご都合主義に流れ始めています(写真:Gengorou/PIXTA)

国会議員の「第2の給与」とも呼ばれる、月額100万円の「文書通信交通滞在費(文通費)」をめぐる与野党協議が、すったもんだの末、永田町特有の「議員の使い勝手優先」というご都合主義に流れ始めている。

4月7日の与野党協議会で、共産党を除く各党が、日割り支給の実現と、「文通費」の名称と目的を変更する法改正で基本合意。今週、再協議するが、日割り支給の早期立法化を先行させ、国民が注視する、使途公開・国庫返還義務化の論議は、先送りされる見通しとなったからだ。

この「文通費」問題は、2021年10月の衆院選後、日本維新の会の新人議員が「1日だけの議員在籍で100万円支給はありえない」とネット上に投稿したことで一気に政治問題化。あわてた各党が対応策の協議を始めたが、国会議員に共通する既得権返上への潜在的不満から、昨年12月の臨時国会では合意が得られず、国民の批判の的となってきた。

今回の与野党協議会の基本合意は、4月24日投開票の参院石川選挙区補選の当選者を日割り支給の対象とするための、「暫定措置」とされる。しかし、領収書などによる厳密な使途公開を嫌がる議員心理から、「厳しい措置は、先送りでうやむやにする」との意図も透けて見え、専門家などから「横流しの正当化」との非難の声があがる。

年間1200万円支給、使途制限も公開義務もない

そもそも、国会議員に毎月支給される100万円の文通費は「何にでも使える便利な手当」だった。議員給与に当たる年間2180万円の歳費とは別に、年間1200万円が支給され、使途の制限も公開義務もないからだ。

このため、長年にわたり、多くの議員にとって「生活費や交際費を賄える貴重なお小遣い」(自民若手)という位置づけだった。だからこそ議員たちは「第2の給与」と呼び、特権を享受してきた。まさに「永田町の常識は世間の非常識」の典型だ。

もちろん、これまでも国会でも、「議員としても在籍日数を無視した一律満額支給と」いう制度の改正論が、何度も提起された。しかし、そのたびに反対論が噴出して、結論先送りを繰り返してきたのが実態だ。

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