「少年院」で数学を教えた先生が見た学校との違い 「背中を見せてはいけない」「ホチキス留めNG」…

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数学を通して少年院での矯正教育に関わった高橋一雄氏。学校でも刑務所でもない、少年院における教育の可能性とは――(写真:hellohello/PIXTA)
学校でも刑務所でもない、少年院における教育の可能性とは――? 数学を通して少年院での矯正教育に関わった数学指導者・高橋一雄氏と数学教育の専門家・瀬山士郎氏と、少年院を知り尽くした元法務教官・村尾博司氏が、それぞれの立場から「少年院における数学教育」の意味を考えた共著『僕に方程式を教えてください』。同書より一部抜粋し再構成のうえ、本稿では高橋一雄氏が少年院で見たさまざまな風景について語ります。

授業を通じて知った、約束事

少年院での教科指導をお手伝いさせて頂き10年になりますが、その間、各施設の院長および現場の法務教官のご厚意で、授業以外でも院内の行事(読書発表会・運動会・中学校卒業式・出院式他)に出席する機会を得ることができました。

そこで、この10年間を通じて、授業に参加した経験から知った少年院での約束事、また、実際の我々の授業風景をお話ししてみたいと思います。さらに、印象的だった少年院での中学校卒業式、および施設での出院式の風景もお伝えできればと考えています。

10年前の景色ゆえ、今は分かりませんが、赤城での授業に参加し、いくつか不思議に思うことがありました。最初に「う~ん……?」と思ったのが、教官が板書をするとき、常に身体を黒板に対し横向きに黒板をほぼ見ずに板書をし、顔は常に少年たちに向けているのです。見ていて書きにくいだろうなと。

授業後、教科指導の主任女性教官にこのことを話すと、少年院では、教官は絶対に少年たちに背中を見せてはいけないという規則があるのだそうです。言われてみればある意味、仕方ないことなんでしょう。ただ、教室には必ず後ろにも教官がひとりはいて、さらに廊下側の壁は大きな窓になっており、常に教官が廊下を往復し各教室を確認しています。それでも、ここまで厳格に決まりがあることに驚いたわけです。

また、14、15歳は多感な時期でもあり、授業中、私に怒鳴ってきた少年もいたので教官も神経を遣い大変です。少年が私に怒鳴ってきた状況ですが、教官が説明に悩んだ様子でしたので、後ろから私が助言をしたときのこと。

ひとりの少年が、「お前うるせぇ~んだよ! それならてめーが教えてみろよ!」「ほらやれよ! 早くやれよ!」と、食ってかかってきたのです。少年の多くが大人、特に教師を嫌っているので仕方がないことなのですが。

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