職人の「感覚」をすべて「数値化」したパン屋の凄み 「たった5日でパン屋になれる」仕掛け人の想い

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コロナ禍の今、「5日間でパン屋になれる」リエゾンプロジェクトに注目が集まっているようです。その背景を取材しました(写真:リエゾンプロジェクト)

長引くコロナ禍で、業態転換や異業種参入が進んでいる。国や自治体の業態・業種転換や事業再編、新分野展開への助成金なども参入の後押しをしているようだ。

そんななか、「5日間でパン屋になれる」キャッチフレーズのもとパン屋開店のノウハウを提供する、リエゾンプロジェクトの開業支援説明会への参加者が、コロナ前に比べ倍増しているという。参加者は飲食店、バーなどのほか、カラオケ店、ガソリンスタンド、不動産賃貸業、化粧品の製造販売業など、コロナ禍で影響を受けた業種が多く見られる。

「外食は減っても、マスクをしたまま買い物できて、家でも食べられるパン屋には中食需要があり、むしろ売り上げが伸びている。休業に追い込まれたり、売り上げが落ちた業種ではコロナが終わっても客足が戻るかどうかわからない。そのため、業態変換というより、もう1つの柱を作るべく、コロナでも影響を受けにくいパン屋に進出したいという需要がある」と言うのはリエゾンプロジェクト主宰で、ベーカリープロデューサーの河上祐隆(かわかみ・つねたか)氏だ。

同社の直営店や開業支援した店舗のほとんどが、コロナ前に比べ売り上げが110〜200%と増加。客足だけではなく、客単価も200〜300円アップしているという。

ただ、パン屋といえば、長年修行をして独立するイメージがある。それがたった5日の研修で、フランチャイズでもなく、開業できるとはいったいどういうことなのか。

人を育て、独立させ…を繰り返す徒労感

河上氏は18歳の時にパン業界に足を踏み入れ、見習いからスタート、22歳で独立開業した。

「パン業界のキャリアプランは、最終的に独立すること。数年の経験がないと独立できないというのは、今でも常識だ。しかし、新入社員を雇用して独り立ちさせるために、ゼロから人材を育てるのは経営者にとって自分で自分の首を絞めているようなもの」(河上氏)

自身の独立から20年、河上氏もスタッフを増やし、今まで100人以上の弟子たちを独立させていたが、人を育て、独立させ、またゼロからスタートすることに徒労感を覚えていた。

そんなとき、ドイツのパン屋で働く一番弟子を訪ねて視察。リエゾンプロジェクトへと繋がるヒントを得た。

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