アルピナ信奉者が驚いた「BMWへ商標譲渡」の意味 57年の関係を整理した先に2社各々の道筋が見える

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アルピナの最高級モデル「B7」。超高性能でありながら快適至極の電子制御サスペンションを備えている(筆者撮影)
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3月10日、ドイツBMW本社(BMW AG)とアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン有限/合資会社から相次いでプレスリリースが配信された。「アルピナ」ブランドの商標権をBMW AGが取得し、2025年末をもって現時点で57年に及ぶ両社の協力協定は満了、現在のBMWアルピナの開発・生産体制が終焉するという内容だ。

アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン有限/合資会社が独立した自動車メーカーとして市場に送り出すBMWアルピナの車両は、BMWが取りそろえるきわめて豊富な技術資産をベースに、独自のエッセンスを加えてワンステップ上の高級・高性能を実現してきた。

超高性能と快適性が両立したブランド

メーカーに専用開発を依頼した限られた種類のタイヤを採用し、それに合わせて電子制御ショックアブソーバーを持つサスペンションにも専用のチューニングを施す。アウトバーンやワインディングロードなど、一般道におけるテストに非常に長い時間を費やし、サスペンション設定のメニューに通常のBMWにない「コンフォート・プラス・モード」を用意するなど、超高性能と快適性の両立を図っていることが高く評価されている。

燃料供給装置の製作からエンジン全体、車両全体までチューニングの範囲を拡大、やがては自動車メーカーとして認められるまでになった(写真:ニコル・オートモビルズ合同会社)

かつてはアルピナの本拠地があるブッフローエにおいて空のボディに1台1台、部品を加えて組み立てられていたが、近年ではBMW AG社内の特別なラインで多くの生産工程が進められるようになっている。直接的な資本関係を持たないにもかかわらず、自動車メーカーが外部の企業に自分のクルマを作らせるのは世界的にも稀なケースであり、BMWとアルピナの間の信頼関係の強さを示している。

BMWグループは2030年にEV販売比率50%以上を視野に入れ、バリューチェーン全体での二酸化炭素排出量を2019年比で33%以上削減する計画を発表、V12エンジンの生産もまもなく終了する。電動化、脱炭素、自動運転という大きな課題を解決するにあたり、自動車の開発・生産体制は今後さらに複雑で大掛かりなシステムとなっていくだろう。

現在のBMWアルピナのような少量生産メーカーにとっては、コストの面でも法的セキュリティの面でも、さらなる困難が予想される。そうした時代を前に、両社にとってメリットのある形で関係を整理しておこうというわけだ。

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