実は「冷戦後で最悪」アメリカとロシア因縁の関係 国家の威信をかけた覇権争いはどうなるか

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(© 2022 Bloomberg Finance LP)
「地政学」とは、その国がどこにあるのか、どんな海と山に囲まれているのか、資源は豊かなのか…といった地理的要素から、その国の政治や外交、行動原理などを読み解く学問です。世界の動き、国際政治の思惑が見えてくる「地政学」は、ビジネスにつながる学問・教養としてニーズが高まっています。
昨今のロシア対ウクライナの構図は、そもそもどこから始まっているのか?学研プラス『働く君に伝えたい本物の教養 佐藤優の地政学入門』より、「ロシアの地政学」について一部抜粋・再構成してお届けします。

世界が注目する北極海ルートとは何か

2021年1〜2月、ロシア船籍のタンカーが、ロシア・サベッタ←→中国・江蘇省の北極海ルート往復航行に成功。これまで夏期に限って使用されていた北極海ルートが通年で利用可能なことが証明されたのです。

北極海ルートは、日本を含む東アジアとヨーロッパを結ぶ最短の航路であり、航行距離は従来の南回りルート約2万1000㎞の約60%にあたる約1万3000㎞。しかも、情勢が不安定な中東地域を通ることなく、チョークポイントも少ないため世界的に注目されています。

かつて一年の大部分が氷に閉ざされていた北極海は、近年の気候変動、温暖化の影響でその姿を急速に変えており、今後20年間で北極の氷は消滅するという推測もあります。この温暖化が、北極海ルートの通年利用を可能にしたのです。

一方、氷がなくなってしまえば、北極海はユーラシアと北米大陸に囲まれた内海になります。アメリカとロシアが、北極海を挟んで対峙することになるのです。ロシアは近年、北極圏での軍備増強や大規模な軍事演習に乗り出し、この地域の豊富な天然資源に目を付けた中国も北極圏への進出を表明しています。北極圏に従来はなかった緊張が生まれているのです。

スエズ運河やマラッカ海峡などを通過する従来の南回りルートに比べ、北極海ルートのチョークポイントはベーリング海峡のみ。航路も短いため、10日間は短縮できます。

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