30年目のJリーグ「IT企業が続々参入」の深い意味 先駆者「鹿島」小泉社長らが語るJリーグの行く末

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2月26日のカシマスタジアム(写真:アフロ)

2022年Jリーグ開幕から1カ月。今季も王者・川崎フロンターレがリーグ全体を牽引する展開になっている。コロナ禍は続いているが、東京など18都道府県に出されていたまん延防止等重点措置が3月21日に全面解除。サッカースタジアムも収容100%の観客動員が可能になった。過去2年間、入場料収入の大幅減に苦しんできた各クラブ関係者も胸をなでおろしていることだろう。

1万6000席の無料招待を実施したワケ

アフターコロナを視野に入れ、鹿島アントラーズは2月26日のホーム開幕戦・川崎戦で2階席・1万6000席の無料招待に踏み切った。大胆な試みを行った同試合の最終的な観客数は2万7234人。メルカリ会長と鹿島アントラーズ・エフ・シー社長を兼任する小泉文明氏は狙いを説明する。

「2020・2021年とわれわれは入場料収入の減少を強いられてきました。人が来なければグッズ販売も落ちるし、スタジアムの熱気もなくなる。2011年3月の東日本大震災のときもダメージを受けたんですが、観客動員がその前の水準に戻るまでに4~5年かかったという過去もあり、熱量を取り戻すために迅速なアクションが必要だったんです」

J2・アルビレックス新潟が約20年前に本拠地となる「ビッグスワン」開業後、無料券を配布して新規観客の掘り起こしを図って成功を収めたことがあったが、IT企業・メルカリが運営する鹿島は単に集客増を推進するというアナログ的な発想ではない。ID登録を採用し、顧客データを取得。それを今後のマーケティングに生かすことを考えたのだ。

小泉文明氏(2021年11月撮影)(写真:筆者撮影)

「無料招待の方を分析したら、初観戦というお客さんが想像以上に多かった。彼らに2度3度と来場してもらうためにさまざまな施策を考えていくのが今後のテーマになります。これまでJリーグを筆頭に、スポーツ業界全体が現場の経験値やカンで経営する傾向が強かったと思いますが、データを駆使してPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回せるようになれば、ファクトに基づいた運営ができる。それは必ずクラブにとってプラスになると思います」と小泉社長は強調する。

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