新幹線札幌延伸で気がかり「並行在来線」の大問題 30年度末開業だが、いまだ方針が決まらない

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駒ヶ岳を望みながら噴火湾沿いを伝う函館本線。非電化ながら特急や貨物列車が数多く往来する対本州の大動脈だが普通列車は短編成で本数・利用者とも少ない(落部ー野田生間)(写真:久保田 敦)
鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2022年5月号「どうする? 平行在来線」を再構成した記事を掲載します。

北海道新幹線は2030年度末完成を目標にして、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)により新函館北斗ー札幌間約212kmの建設工事が進められている。この路線が開業すると函館本線のうち函館ー小樽間が、JR北海道の経営から分離される。2030年度末まで残り9年となった現在、JR北海道からの経営分離後の並行在来線をどうするか大問題になっている。

地元との実際の協議は函館ー長万部間と長万部ー小樽間に分けて行われている。前者は山岳地帯を越えてゆく険しいルートのため特急や貨物列車の運転もない路線となって久しく、都市圏輸送的な余市ー小樽間の問題が残るものの、他の区間は鉄道の廃止、バス転換が決断された。だが後者は、2021年4月から協議が停滞している。

旅客は維持困難でも物流の大動脈

こうした状況の中で函館―長万部間について、数人の学識者や元新聞記者の方に見解を聞いた。そこでほぼ共通しているのは、「あれほど立派な、基本的に複線で重量に耐え、そして在来線鉄道としては高速輸送が可能な路線は貨物路線として残すべき」との意見だった。

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ローカルの旅客輸送の実情からは、一部区間を除いて残せる状況にない。鉄道の特性も発揮されない点から、「やめるのが正解。(他の同様の路線も)やめるべき」と、断言する人もいる。しかし、本州・北海道間の物流ルートとしては間違いなく大動脈の輸送モードの1つである。北海道から本州へは乳製品・農作物・紙製品・自動車部品が上位品目で、年間輸送量は約230万トン。本州から北海道へは加工食品・飲料・衣料・宅配便等で同様の輸送量がある。道内発の乳製品や農作物は出荷翌日に首都圏等の店舗に並ぶ。食糧基地としての北海道が、消費地としての首都圏はじめ大都市の生活を支える関係にある。

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