東南アジアのネット大手「グラブ」が巨額赤字 経営陣は強気の姿勢も、株価は1日で37%暴落

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グラブはSPACとの合併を通じたナスダック上場から3カ月余りで、株価が7割以上も下落した(写真は同社ウェブサイトより)

東南アジアの「3大ネット企業」の1社で、ネット配車やネット出前などを展開する「グラブ」。同社は3月3日に開示した2021年の通期決算で、34億ドル(約3902億円)に上る巨額の最終赤字を計上した。これを受けて、アメリカのナスダックに上場する同社の株式に売りが殺到。わずか1日で37%も暴落する異例の事態になった。

グラブはシンガポールに本拠を置き、東南アジアの8カ国、480都市でサービスを提供している。ネット配車、ネット出前、スピード宅配、オンライン決済など、さまざまなネットサービスを「スーパーアプリ」と呼ばれる1つのアプリでまかなえる利便性が売り物だ。

同社は2021年12月2日、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じてナスダックに上場。その際の企業評価額は400億ドル(約4兆5914億円)近くに達し、SPAC経由の上場の過去最高記録を塗り替えた。ところが、グラブの株価は初日の取引で20%以上も下落。今回の暴落を含めて、上場直後より7割以上も低い水準に落ち込んでいる。

収益モデル確立への道筋を示せるか

そんななか、グラブの経営陣は強気の姿勢を崩していない。「2021年はわが社にとって、創業以来最も勢いのある1年だった。流通取引総額(GMV)と売上高が大きく増加するとともに、調整後EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)も順調に伸びている」。同社のアンソニー・タンCEO(最高経営責任者)は、決算説明会でそう述べた。

具体的には、2021年のGMVは前年比29%増の161億ドル(約1兆8480億円)に達し、2021年9月に開示した業績予想の上限値を上回った。ネット出前や金融サービスの好調を追い風に、(手数料収入を主とする)売上高は前年比44%増の6億7500万ドル(約774億円)を計上した。

だが、グラブが株式市場の厳しい評価を覆すのは簡単ではなさそうだ。東南アジアの3大ネット企業のなかでは、中国の騰訊控股(テンセント)が出資するシンガポールの「Sea(シー)」が2017年に先陣を切って上場したが、同社の株価は2021年秋以降の半年で約7割も下落した。

本記事は「財新」の提供記事です

残る1社のインドネシアの「GoTo(ゴートゥ)」は、2022年1~3月期に予定していた上場を延期する可能性が高い。3社は規模こそ大きいが、損益はいずれも赤字。収益モデル確立への道筋を明確に示せなければ、投資家の信頼を勝ち取るのは困難だろう。

(財新 駐シンガポール記者:楊敏)
※原文の配信は3月4日

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