エンタメ界の性的強要はなぜ根絶できないのか 呆れた実態、力を持つ人が陥る危険な思考回路

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公開直前に急きょ中止された映画『蜜月』公式サイト。トップページにはその説明へのリンクが張られています(画像:映画『蜜月』公式サイト)

あえて「国際女性デー」の3月8日にワールドプレミア(最初の上映会)を行ったばかりの映画『蜜月』が、翌9日に急きょ公開中止を発表。その理由は、「榊英雄監督がキャスティングを持ちかけて性的行為を強要したことなどが報じられたから」でした。

同作は家庭内の性被害を描いた作品だったこともあって衝撃は大きく、10日の「めざまし8」(フジテレビ系)はトップニュースで報じ、MCの谷原章介さんは「榊さんは知人」と前置きしつつ「残念」「あってはならない」などと断罪。一方、当事者の榊監督は記事の内容を一部認めるような形で、謝罪コメントを発表しました。

全面的ではないものの記事の内容を認めて謝罪した以上、榊監督は責められて当然であり、今後は「どのように償っていくのか」が求められるでしょう。しかし、問題は今回の当事者だけではありません。谷原さんが「エンタメ業界は、いまだに夢や希望を持って『映画に出たい』という女性にとっては生きにくい世界なんだなと痛感いたしました」と語っていたように、私のもとにも性的被害に関するさまざまな話が聞こえてきます。

「#Me Too運動」が広がった2017年から4年超が過ぎた今、なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか。また、どんな問題や現実があるのでしょうか。芸能界のさまざまなエピソードを知るエンタメコラムニストであり、女性の性被害についても相談を受けるコンサルタントでもあるという立場から、その実態を挙げていきます。

ビジネスパーソンのみなさんは、「自分には関係のない芸能界の話」と思うかもしれませんが、実は他人事ではない問題。リスク回避の意味も含めて、ここでその実態をつかんでおいてほしいのです。

本当の力を持つわけではない強者たち

なぜこんなことが起きてしまうのか。テレビや映画の関係者、芸能人、芸能事務所のスタッフ、芸能リポーター、エンタメ業界の出入り業者などと話をしていると、いまだにこの手のエピソードを普通のこととして聞くことがあります。

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