感染で中止相次ぐ演劇「チケット返金条件」の実際 白鸚「ラ・マンチャの男」観劇が「見果てぬ夢」に?

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松本白鸚さんと松たか子さん(写真:共同)

寒さ厳しい2月の東京・日比谷の日生劇場前。感動に酔いしれる観客でにぎわう日があるかと思えば、閑散とした劇場の前で呆然とする観客が見られる日が交差した。

20歳代から50年以上主役を務め、傘寿(80歳)を迎える松本白鸚のミュージカル「ラ・マンチャの男」が「ファイナル公演」と銘打って開演中のことだ。

松本白鸚は市川染五郎、松本幸四郎、松本白鸚という歌舞伎役者としての名跡を継いでいく人生のなかで、ミュージカル俳優として1969年の日本初演から主役のドン・キホーテとセルバンテスを演じてきた。

主題歌「見果てぬ夢」が有名で、聞いたことがある人も多いであろう。明るく陽気に踊り歌うミュージカルと違って、テーマは重く、宗教裁判にかけられようとしている男が一時入れられている地下の牢獄が舞台で、異質のミュージカルだ。しかし、そのテーマの奥深さ、ミュージックナンバーのすばらしさ、白鸚の演技力・歌唱力に長年魅了されてきた観客が多く、ファイナル公演とあって連日チケットは売り切れだった。

上演できたのは7公演だけ

しかし、コロナ禍で公演関係者の陽性反応が出たために一度中止になり、その後再開したが、また中止となり、結局2月6日から28日の千秋楽までの全25公演中、上演できたのは7公演だけという異常な事態になった。約7割の観客にとってファイナル公演観劇が「見果てぬ夢」になってしまった。「もう二度と観られないのか」「ぜひ再演を!」といった声が相次いでいる。

実は、筆者も白鸚の「ラ・マンチャの男」に魅了され、30年以上観てきた。今回のファイナル公演は2月14日の回を予約していた。同日は公演があった7公演うちの1日で、幸運にも観劇できた。まさにプラチナチケットだったことになる。

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