日本株はこれで「最悪期脱出」と断言できるのか 「ロシアのウクライナ侵攻後」の注目点は何か

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首都キエフは今後どうなるのか。ロシアのウクライナ侵攻はほぼ「最悪の事態」で進行するが、株価は反発している(写真:AP/アフロ)

ウクライナ情勢は、ついにロシアの軍事侵攻という最悪の展開へと進んだ。多くの人命が失われており、さらに失われるかもしれない。早期に事態がよい方向に進むよう、祈りたい。

同国をめぐる情勢については、安全保障面や今後の国際政治に与える影響(いずれも日本を含む)など、多々論ずべきことがある。ただ、筆者はそうした分野における見識が、ほかのそれぞれの分野の専門家に比べて乏しい。

そのため、当コラムでは広く論じることをしない。あくまでも、筆者の守備範囲である経済・市場分析という点に限って語ることとする。

なぜ株価は軍事侵攻後すぐにリバウンドしたのか

さて主要国の株価は、2月24日の日本市場の後場から同日のアメリカ市場の滑り出しにかけて、ロシアの軍事侵攻との報道を受けて下落した。だが、アメリカ市場などではそこから株価リバウンドに入り、株価の戻り歩調は先週末まで持続した。

こうした株価の動きは、投資家がそろいもそろって「ロシアが軍事侵攻する可能性はゼロに決まっている」と信じ込んではいなかったためだと考える。

つまり、2月中旬以降の日米株などの軟調さの背景には、「ロシアの軍事侵攻の可能性は100%ではないがかなりあるため、そうした展開に進むことを警戒しよう」といった心理があり、すでにいくばくかは最悪の事態を織り込みにかかっていたと解釈できる。

そもそも、ロシアや東欧の政治や安全保障に極めて疎い筆者ですら、昨年11月22日の当コラムにおいて“6頭目の熊”の中で「ロシアによるウクライナ侵攻の懸念もある」と述べていたくらいだから、賢明な投資家たちはロシアが侵攻する展開は容易に想定していただろう。

現実に軍事侵攻という最悪の形で事態が動き始め、それが24日まで一時は一段と日米などの株価を押し下げた。だが、あくまでも市場動向に限って論じれば、今さら投資家の大半が驚愕して投げ売りし、直近値から何割も株価が下落するような材料ではなかった。そのため、下げが一巡すれば株価は戻りに転じた、ということだといえる。

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