過去の天才音楽家たちが「貧乏だった」納得の理由 日本人第一人者が語る現代音楽の魅力と奥深さ

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藤倉 大(ふじくらだい)/1977年生まれ。英王立音楽大学大学院修士課程、キングス大学大学院博士課程で学ぶ。1998年セロツキ国際作曲コンクールで史上最年少の1位に。ほか3度の尾高賞、芥川作曲賞など数々の賞を受賞。2019年公開の映画『蜜蜂と遠雷』の音楽も手がける。主な作品にオペラ『ソラリス』『アルマゲドンの夢』、管弦楽曲「レア・グラヴィティ」「グロリアス・クラウズ」など。英ロンドン在住。

大阪の普通の中学生は、音楽を学びたい一心でイギリスへ飛び出した。高校、大学で出会う教師や仲間、超一流の音楽家たち。すさまじく個性的で人間くさい人々とのドタバタにもまれながら、引っ張りだこの人気現代音楽作曲家に上り詰めた現代音楽作曲家の自伝エッセー『どうしてこうなっちゃったのか』。著者の藤倉大氏に聞いた。

原稿はエコノミークラスの座席で書いた

──大学院進学では2大学を競わせより有利な奨学金を引き出す、大家さんにはキリスト教の「七つの大罪」を持ち出して家賃上げを阻止するなど、タフな闘いぶりでした。現在は安定されましたか?

普通そう思いますよね。でもね、そんなに変わってないんです。今の借家はこのかいわいでは安価だし、大家さんもいい人なんだけど、ボロボロなんです。4カ月ガスと電気のトラブル続きで、ようやく直ったら突然停電。突如火山が爆発したようなアラーム音が家中に鳴り響き、2日間耳が聞こえにくくなった。高くついた緊急修理代をどうするか。大家さんに「あなたが正しいと思われる額を払ってください」と伝えました。ちょっとプレッシャーですよね、それ。

──出ました、天性の交渉の腕。

全額払ってくれました(笑)。それくらいしないと生きていけないですよね。大家さんも決して余裕がある人じゃないけど、そっちはそっち、こっちはこっちで闘うというか、主張していかないと。

学生時代に住んでいた究極のボロ家からは脱出したけど、妻と娘の3人暮らしで部屋が1つ増えた程度。自分の部屋がないので、原稿はもっぱらエコノミークラスの座席で書いた。銀行口座の特典で年6回だけ利用できる、空港のビジネスラウンジでも。受付で航空会社を聞かれLCC名を言うと、ニッコリされるのが恥ずかしい。

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