台湾有事で日本を主役にするバイデン政権の思惑 台湾への軍事侵攻に日本が抑止力として関与?

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2017年11月に訪日したトランプ前大統領と握手する安倍晋三元首相。この時、「インド太平洋戦略」が日米の共同外交戦略となった(写真・Bloomberg Finance LP)

アメリカのバイデン政権が2022年2月11日発表した「インド太平洋戦略」(以下、「戦略」)は、「台湾軍事侵攻への抑止」を明記した。台湾有事を想定した日米共同作戦計画の共有もうたい、台湾問題で「脇役」だった日本を「主役」にしようとする狙いが透ける。トランプ政権が3年前に発表した「インド太平洋戦略報告」と比較しながら、バイデン戦略の特徴を浮き彫りにする。

日米の共同外交戦略「インド太平洋戦略」

アメリカが、世界戦略の重心をアジアに移したのはオバマ政権からだが、「インド太平洋戦略」の名称を使ったのはトランプ前大統領が初めてだった。経緯を振り返ると、トランプ氏は2017年11月の訪日で、安倍晋三首相との首脳会談で「インド太平洋戦略」を「日米の共同外交戦略」にすることで合意した。

「インド太平洋戦略」はもともと安倍氏が2016年8月末、ナイロビのアフリカ開発会議(TICAD)で、中国の「一帯一路」に対抗して発表したもので、①日本中心の途上国インフラ投資、②両大陸をつなぐ海を「平和でルールの支配する海」にするため、中国を牽制する「日米豪印4カ国」安保連携を打ち出した。これが「日米共同外交戦略」になったことで、日本の外務省などは「日本の外交構想力が国際社会に認められた」と、自画自賛している。ただ「インフラ投資」の実績は皆無に等しく、対中牽制の安保枠組みが突出している。トランプ政権が2019年6月に初めて発表した「インド太平洋戦略報告」も、対中包囲を同盟・友好国との連携強化によって重層的に進める安保一色の内容で、「インフラ投資」の側面は消えた。

今回、ホワイトハウスが19ページの戦略を発表したのは、ブリンケン国務長官の提案で開かれた日米豪印4カ国の「クアッド=QUAD」外相会合(シドニー)の当日だった。外相会合は、ロシアのウクライナ侵攻を念頭に、①国家主権保護の重要性確認、②中国の海洋進出に対応し「自由で開かれたインド太平洋」の推進、で一致した。

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