中国の国産旅客機「C919」が直面する商用化の壁 2017年に初飛行も、1号機の納入が何度も延期

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C919は初飛行から4年余りを経た現在も、航空会社への納入に漕ぎ着けられていない(写真はCOMACのウェブサイトより)

中国初の国産大型旅客機「C919」の開発プロジェクトが正念場を迎えている。同機の開発を主導する国有航空機メーカーの中国商用飛機(COMAC)は2月7日、社内で幹部会議を開催。同社がウェブサイトで公表した情報によれば、その席で董事長(会長に相当)の賀東風氏が次のように発言した。

「2022年は大型機(C919)のプロジェクトが研究開発段階から徐々に商用化段階に入っていく。多数の課題に同時に取り組むなか、問題が複雑に交錯しており、(プロジェクトを計画通りに進められるか)差し迫った状況だ」

C919は、最新かつ国際的な耐空証明基準に基づいて中国で開発された初の幹線航空路向け旅客機だ。座席数は158~168席で、アメリカのボーイングB737型機と欧州のエアバスA320型機をベンチマークに設計された。

2017年5月に試作機が初飛行に成功した後、2020年12月からは民間航空行政を所管する中国民航局による「耐空証明」の審査プロセスに入っている。審査完了後の1号機の納入先は、国有3大航空会社の1社である中国東方航空となる予定だ。

耐空証明の審査は、異なる飛行条件の下で機体が終始安全な飛行状態を保持できるかどうかを検証するもので、C919の量産および商用化を実現するための大前提だ。当初の計画では、COMACは審査を2017年中に完了できると見込んでいた。

アメリカ政府の輸出規制のリスクも

だが現実には、C919の商用化スケジュールは繰り返し延期された。中国の航空機産業および監督当局にとって、国産大型旅客機の耐空証明審査はまったく初めての挑戦であり、審査プロセスの確立に想定以上の時間がかかっているためだ。C919が最新のテクノロジーや新素材、新たな加工技術などを多数採用していることも、審査の難易度を高めている。

それだけではない。C919は同時に、アメリカ政府の輸出規制という別の難題にも直面している。アメリカ商務省の産業安全保障局(BIS)は2020年12月、輸出管理の対象になる「軍事エンドユーザー(MEU)」のリストに中国の58の企業や団体を追加した。そのなかに、C919の機体の組み立てを担うCOMACの子会社などが含まれていたのだ。

本記事は「財新」の提供記事です

C919は、エンジンにアメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)とフランスのサフラングループの合弁会社であるCFMインターナショナル製を採用している。また、搭載する航空電子機器にもアメリカのハネウェル製やイートン・コーポレーション製などが含まれている。

仮にアメリカ政府がMEUに基づく規制を発動し、エンジンや航空電子機器の輸出が差し止められれば、C919の量産および商用化は致命的な打撃を被りかねない。

(財新記者:黄栄)
※原文の配信は2月8日

財新 Biz&Tech

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