中国鉄鋼大手、21年10月から純利益激減の事情 宝山鋼鉄、不動産業界の資金繰り悪化など影響

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宝山鉄鋼の好業績は2021年10月から急ブレーキがかかった。写真は同社の熱間圧延ライン(宝山鋼鉄のウェブサイトより)

中国の鉄鋼大手の宝山鋼鉄は1月28日、2021年の通期の純利益が236億~240億元(約4281億~4354億円)に達し、前年比86~89%増加するという業績予想を発表した。

宝山鋼鉄は世界最大の鉄鋼企業グループ、中国宝武鋼鉄集団の中核上場子会社だ。大幅増益の要因について宝山鋼鉄は、2021年を通じて(新型コロナウイルスの流行で落ち込んでいた)経済活動の再開が世界的に進み、鉄鋼製品の需要が拡大したことや、それに伴い鋼材などの市場価格が大幅に上昇したことを挙げた。

だが見逃せないのは、2021年第4四半期(10~12月)の純利益が顕著に目減りする見込みであることだ。10~12月期の予想純利益は20億~24億元(約363億~435億円)と、通年の予想純利益の1割にとどまる。第3四半期までの9カ月間(1~9月)の純利益は前年同期の2.75倍に達していたが、そこから急ブレーキがかかった格好だ。

鋼材価格が右肩上がりから一転急落

中国では2021年秋から鋼材の市場価格が大幅に下落。その一方、(鉄鋼製品の原料となる)コークスや合金の価格は高止まりした。宝山鋼鉄では、それに加えて環境対策費の増加や、広東省湛江市で新規稼働した生産設備の減価償却費などが重なり、10~12月期の利益を押し下げた。

なお、10~12月期の需要の動きについて宝山鋼鉄は、「自動車業界や家電業界などの需要がいくぶん回復したが、全体的には例年の水準まで至らなかった」と説明した。さらに、中国政府の融資規制の影響で不動産業界の資金繰りが悪化し、建築向けの鋼材需要が低迷したことが、市場価格を引き下げる重しになった。

本記事は「財新」の提供記事です

宝山鋼鉄が直面した市場環境の急変は、2021年の鋼材価格の乱高下からも見て取れる。代表的な鉄鋼製品の価格は年初から9月にかけて右肩上がりに上昇し、棒鋼や熱間圧延コイルの市場価格が相次いで過去最高を更新した。だが、そこから相場は急落に転じ、10月下旬には年初からの値上がり分がほぼ帳消しになる水準まで低下した。

(財新記者:趙煊)
※原文の配信は1月28日

財新 Biz&Tech

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