「つぶしがきく仕事」ばかり選んだ50代社員の末路 リストラ対象者と向き合い知った「人生の残酷」

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「つぶしがきく選択」ばかり選ぶことの危険とは(写真:/PIXTA)
会社員人生で「つぶしがきく選択」を最優先に選んできた人たちの行末とは? 「たいろー」名義で転職やキャリア、テック業界の情報を発信する森山大朗氏の初の著書『Work in Tech! ユニコーン企業への招待』より一部抜粋・再構成してお届けする。

「やりたいこと」がわからず、かといって「やりたくないこと」をやらずに済む工夫もせず、漫然と会社の辞令に従って会社員人生を歩む。僕は社会人1年目から、そんな人生を極端に恐れてきました。

というのも、そうした生活を続けた先に、「いつかは市場価値が曖昧な自分と向き合う瞬間が来る」ということがわかっていたからです。

「リストラ対象者の紙の履歴書」を打ち込む日々

皆さんはリストラされる光景を見たことはありますか。僕はあります。会社をリストラされた人たちが一体どういう境遇に置かれるのか。幸か不幸か、僕は社会に出て働く直前に、その現実を垣間見ることになったのです。

僕が新卒で入社したリクルートは「転職支援事業」(のちに転職エージェント事業と改称)と対を成すように「再就職支援事業」というビジネスがあります。

当時は、日本を代表する大企業が毎月のように人員削減を打ち出しては、リストラの実務をこういった「再就職支援事業者」に委託するような不況の時代でした。そんななか、どうにか内定をもらい時間に余裕ができた大学4年生の僕は、ひょんなことからこの再就職支援事業部で内定者バイトをすることになったのです。そして、社会に出る前のナイーブなこの時期に、強烈な洗礼を受けることになります。

アルバイト初日、目をキラキラ輝かせてオフィスに出社した僕の仕事は「デスクに山のように積まれたリストラ対象者の紙の履歴書を、ひたすらエクセルで打ち込む」という作業でした。これは本当にツラかった。

当時は大手電機メーカーや機械メーカーのリストラ案件が多く、営業やマネジメントといったジェネラリストも、専門性を持つスペシャリストもリストラ対象に挙がっていたのをよく覚えています。

様々なチームで長年働いてきた管理職や、設計一筋◯◯年といった技術者たちが、ある日いきなり事業部ごと売却されたり閉鎖されたりしてポジションがなくなり、配置転換。

50歳を過ぎていきなり「営業をやれ」と言われても成果は出せず、あっという間にリストラ対象者に……なんて話が、ゴロゴロ転がっていた時代です。

アルバイトの僕はデスクトップでひたすら入力作業ですが、その間、オフィスを頻繁に出入りしていたのが、キャリアカウンセラーという職種の先輩社員たちでした。クライアント企業から依頼されたリストラ対象者一人ひとりと面談し、再就職先を斡旋するのが彼らの仕事です。

次ページ彼らには「自分のキャリアを自分でつくる」発想がなかった
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