円安はいいことずくめと思う人が気づかない視点 国民生活の圧迫だけでなく企業の為にもならない

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円安政策からの脱却を考える局面に来ています(写真:freeangle/PIXTA)
円安になると企業利益が増えることから、20年以上の期間にわたって円安政策がとられてきた。しかし、その結果、古い産業が温存され、日本経済の衰退がもたらされた。
資源価格高騰を転嫁しにくいいまこそ、円安政策を根本的に見直す好機だ。
昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第62回。

円安に対する評価が変わってきた

円安に対する評価が、このところ変化してきている。

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これまでは、「円安は企業の利益を増やすからいいことだ」とか、「心地よい円安」という声が圧倒的に多かった。

しかし、最近では、円安が国民生活を圧迫しているという声が強くなってきている。

その大きな原因は、輸入価格上昇によって消費者物価の高騰が懸念されることだ。

それだけではない。企業の観点から見ても、円安が望ましいとはいえないことが認識されるようになってきた。

国民経済計算のデータを見ると、確かに、「円安期に企業の営業余剰が増える」という傾向が見られる(「営業余剰」とは、企業の生産活動によって生み出された純生産額から雇用者報酬を差し引いたもの)。

具体的には、次のとおりだ。

(外部配信先では図表や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

営業余剰は、1990年代の後半には低水準だったが、2000年代の初め頃から増加した。1990年代後半に壊滅状態に陥った製鉄業などが息を吹き返した。さらに、日本の自動車輸出が増加して、アメリカ市場を席巻した。「アメリカ中、どこに行ってもトヨタ車ばかり」というような状況が出現した。

こうした状況は、2000年代になってから為替市場への積極的な介入が行われ、円安が進んだことの影響と考えられる。

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