首相と軋轢?尾身会長「突然の変身」が広げた波紋 一転して柔軟な対応を主張、自治体は混乱

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新型コロナ対策の基本的対処方針分科会後、取材に応じる尾身茂会長(写真:共同通信)

政府は1月19日、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染爆発を受けて、新たに13都県を対象にまん延防止等重点措置の適用拡大を決めた。ただ、その際に政府分科会の尾身茂会長が、これまでの人流を抑制する方針から柔軟に対応する路線へ“変身”したことが、関係者に複雑な波紋を広げた。

尾身氏は昨年夏から秋にかけての感染第5波でのコロナ対策では、繁華街などへの人出を減らすいわゆる「人流抑制」を主張していた。

しかし、19日には飲食店の「人数制限」への移行を主張。併せて「オミクロン株の特徴を踏まえた効果的な対策が重要で、ステイホームなど必要ない」と言い放った。

政府と専門家代表の主張が逆転

尾身氏は、コロナ対策に苦闘した安倍晋三・菅義偉両政権でも、感染対策の専門家トップとして政府への提言を続けてきた。ただ、厳しい対策の主張で政府と対立する場面も多く、当時の菅首相が周囲に「(尾身氏を)黙らせろ」と憤慨したとされる。

オミクロン株感染爆発が欧米各国を襲う中、岸田文雄首相はオミクロン対策として「G7各国で最も厳しい対応」を打ち出し、国民的評価を得た。しかし、尾身氏が一転して柔軟な対応を求めたことで、政府と専門家代表の主張が逆転した。

オミクロン株の感染力は桁違いだが、重症化リスクは低いとの各国の研究結果を踏まえ、尾身氏は対応方針を変えたとみられる。ただ、当面の対策は飲食店の「人数制限」や「マスク飲食」の励行だけで、問題化している介護施設や保育現場などでのクラスター対策には言及しなかった。

これに対し、今回まん延防止等重点措置の適用対象となった県の知事から「メリハリというが、実態とかけ離れている」などの批判が噴出。飲食店の営業時間短縮や酒類提供の可否についても、各都県の対応混乱が拡大している。

政府の自治体丸投げの姿勢と、自治体間の足並みの乱れが、オミクロン対策全体への国民の不安、不信を拡大させかねない状況となっている。

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