「ブラック」な公認会計士の仕事に未来はあるか 規制強化で中小監査法人の淘汰が迫っている

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エリートだったはずの公認会計士は今や過去の姿になりつつある(写真:polkadot / PIXTA)

医師、弁護士と並び、「三大士業」と称される公認会計士。その労働実態は業界内で“ブラック”ではないかと噂されてきた。作業は企業の本決算シーズンである4~5月に集中。細かい作業を長時間行ううえに、作業は年々増える一方だからだ。

実は2017年以降、大手の監査法人は、働き方改革に注力している。会計士の資格がなくてもできる業務について、資格のないスタッフにやってもらう、共通のシステムを立ち上げて紙ベースだった作業をオンライン化していく、などといった負担軽減策を実施している。

それでも、現役の会計士たちからは「依然ブラックだ」という声が聞こえてくる。というのも、負担軽減策が、監査項目の増加に追いついていないからだ。一方では残業時間を削減するため、夜は強制的にサーバーへの接続が切断される。「時間内に終わらせなければ」というプレッシャーが増大しているという。

収益性・効率性重視で高まるプレッシャー

さらには収益性重視の風潮も、大手監査法人を中心にプレッシャーを高める原因になっているという。トーマツあずさEY新日本PwCあらたの国内4大監査法人のうち、2つが監査法人名に海外のビッグ4の名を冠している。監査法人側は「海外からのプレッシャーはない」というものの、業界内部には「効率性を意識すべきだ」との”外圧”があることを指摘する声もある。

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「監査は単純作業ばかりで退屈」「やることが決まっていて、数年やれば飽きる」「企業買収の指南役などコンサルティングのほうがエキサイティングだ」として、監査業務から離れていく会計士が後を絶たない。

監査法人で働く公認会計士の数は年々減少。足元では、3.2万人いる公認会計士のうち、監査法人で働いているのは42%。会計士の6割弱が、企業など監査法人以外で働いている。監査の担い手不足は深刻であり、監査法人に残った会計士への業務負荷は増すばかりだ。

1月17日(月)発売の『週刊東洋経済』1月22日号では、「企業価値の新常識」を特集。特集の後半では会計士や監査法人を取り巻く環境の変化についてまとめている。

2021年6月までの1年間で上場企業のうち124社が、大手監査法人から準大手・中小の監査法人に乗り換えた。乗り換えた理由でもっとも多かったのは「監査報酬」だった(金融庁調べ)。

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