中国初「民間過半出資」の高速鉄道が開通の背景 国有鉄道会社の実質的独占の打破には至らず

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杭台線の事業会社には復星集団を中心とする民営企業のコンソーシアムが51%を出資する(写真は復星集団のウェブサイトより)

2022年1月8日、中国初の“民営”の高速鉄道が浙江省に開通した。省都の杭州市と沿海部の台州市を結ぶ「杭台線」で、両都市間の所要時間は以前の半分近い最短1時間3分に短縮された。

杭台線の総延長は266キロメートル。そのうち43キロメートルは既存の路線を共用し、残る223キロメートルを新たに建設した。総投資額は約448億9000万元(約8152億円)に上る。設計上の最高運行速度は時速350キロメートルだが、当初は時速300キロメートルで運行される。

中国政府は近年、鉄道の新線建設の資金調達で民間資本の導入を奨励している。第12次5カ年計画(2011~2015年)の期間に国務院や国家発展改革委員会が関連の通達や文書を多数公布し、制度が整えられた。

杭台線のプロジェクトは、そのような背景のもとで始動した。2017年9月、複合企業の復星集団を中心とする民営企業コンソーシアムが浙江省政府系企業との契約に調印し、同年末から全区間の建設工事が始まった。

民営コンソーシアムの投資回収は前途多難

民営企業コンソーシアムは杭台線の事業会社に51%を出資しており、プロジェクトは鉄道建設の資金調達改革のお手本と見なされている。だが現実には、国有鉄道会社の国家鉄路集団による「事実上の独占」を打破するには至っていない。鉄道事業の特殊性や専門性が壁となり、民営企業コンソーシアムの発言権が限られているためだ。

鉄道業界の複数の関係者によれば、国家鉄路集団には「速度が時速200キロメートルを超える鉄道の運行はすべて系列企業に任せなければならない」という不文律が存在する。杭台線も例外ではなく、列車の運行は中国鉄路上海局集団に委託されている。

本記事は「財新」の提供記事です

新設の鉄道は開通してもすぐに乗客が増えるわけではなく、当初の経営は大幅な赤字なのが一般的だ。そのうえ運行ダイヤなどの重要事項の決定にも口を挟めないなら、民営企業コンソーシアムの投資回収は前途多難と言えそうだ。

(財新記者:白宇潔)
※原文の配信は1月7日

財新 Biz&Tech

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