日経平均が2万5000円に下落しても驚かない理由 米株は今までが出来すぎ、下落後は再び上昇へ

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上院の公聴会で時折余裕の表情を見せたFRBのパウエル理事長。市場の反応はチグハグだが、今までが「上がりすぎ」だっただけだと思ったほうが良い(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

最近は、経済統計や中央銀行高官の発言等々の材料に対して、株式市場などの反応がバラバラになっているようだ。つまり、市場が好材料ではないものを好感したり、さしたる材料でもないことに悲観的な反応をしたりしている。

またアメリカでは、株価と債券価格の動きがまちまちで、同じ材料に対して相反する市場動向になることも多い。そうした例は極めて多数あるが、例えばアメリカでの先週の動きに絞り込んで、さらにそのうちいくつかだけを取り上げてみよう。

市場の反応も市況解説もバラバラで「筋が通らない」

11日には、ジェローム・パウエル連銀議長が、議会上院による再任承認の手続きの一環として、公聴会で証言を行った。基本的な主張は、景気(とくに雇用)の回復やインフレ懸念を受けて「金融政策の正常化を進める」といった、テーパリング(量的緩和の縮小)や利上げなどを示唆するものであった。

しかし、議長が「おそらく年後半に保有資産の縮小を始めるだろう」「正常化するまでは長い道のりになる」とも語ったため、「連銀は正常化を急がない(例えば量的引き締めを年前半には始めない)」との安堵感が市場で優勢となった。

同日のニューヨークダウは、証言前には警戒感から前日比299ドル安まで下押ししていたものが、183ドル高に反転して引ける形となった。長期金利である10年国債利回りも、1.78%から1.75%に低下している。

ところが13日には、NYダウは前日比177ドル安と、やや大きめの下押しを見せた。この日は高PER(株価収益率)銘柄中心に売りがかさんだため、「金利先高観が株価を押し下げた」との解説が目についた。しかし、この日の金利に関連した材料としては、ラエル・ブレイナード理事(次期副総裁)の、上院での承認のための証言くらいしかなかった。

ブレイナード氏は「われわれは2022年に数回の利上げを予測し、その後しばらくして保有資産の縮小を始めることも話し合っている」と語ったが、これらは前述のパウエル議長の主旨ととくに変わりはない。これで「株式市場が金利上昇に対する警戒感を抱いた」というのは、どうも筋が通らない。

しかもこの13日は、10年国債利回りは前日の1.72%から1.71%へと、小幅ながら低下(価格は上昇)している。一部の場況では、金利動向には先高さはないが、株式市場は金利先高「観」を抱いたといった、苦し紛れの解説も目にする。

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