「メタバース×スマートシティ」で拓ける可能性 「DXコンサル」会社が目指すパラダイムシフト

急速な技術の進展などによって社会や人々の暮らしが大きく変革し、パラダイムシフトが起こる中で、企業に対する社会の要請も変化している。その変化に対応していくための推進力となるのがデジタルだ。富士通から生まれたDXコンサルティングファームであるRidgelinez(リッジラインズ)は、設立2年目ながら企業が今後持続的な成長を続けるためのパートナーとして活動領域を拡大している。そんな同社がいま注目している新たなトレンドが「メタバース」と「スマートシティ」、そして「サステナビリティ・トランスフォーメーション」。これらは企業や社会の発展においてどのような可能性を持ち、リッジラインズはどのような事業展開を見せていくのか――。

メタバースは現実世界とつながる空間

「メタバース」という言葉がIT業界を中心に広がってきている。高性能化したゲームの仮想空間が発展したものともいわれるが、従来の娯楽的な要素が強かった「もう一つの世界、もう一人の私」という概念とは異なり、「現実社会とシームレスにつながった共有空間」だと話すのは、リッジラインズでメタバースを研究している佐藤浩之氏だ。

佐藤 浩之氏
Ridgelinez
Principal
Innovation and Business Creation

「ゲームとは異なり、メタバースにはリセットや停止、終了の概念がなく永久につながることができます。また、参加人数にも基本的に制限がありません。将来的にメタバース内での仕事や販売、購入、そして所有という行為が一般的になる可能性を持っています」

メタバースに参加している人同士が同じ時間軸を体験することも大きな特徴だという。つまり、リアルの世界と同様に、人の交流や経済活動をメタバースという"街"のような空間の中で行うことができるわけだ。

そこで、昨今注目される「スマートシティ」にもメタバースの要素を取り入れ、活用していく必要があるというのが、佐藤氏の考えである。

「スマートシティはこれまで、公共主導で進められてきたため、どうしても特定の場所に根差したハードウェア、インフラの整備に力点が置かれていました。しかしここ数年で民間の大手企業が主導するプロジェクトが複数立ち上がり、そこではソフトウェア重視の新たな動きが出てきました。建物や交通といった従来のハードウェア中心の街づくりから、人を中心としたリアルとバーチャルのシームレスなコミュニケーションによって、発展する街をつくろうとしています」(佐藤氏)

「メタコミュニケーション」で非言語情報を共有できる可能性も

佐藤氏は、メタバース空間では5G通信やVR(仮想現実)、AR(拡張現実)といった技術の発展により、従来のテレコミュニケーションが「メタコミュニケーション」へと進化すると語る。

「メタコミュニケーションの世界では、通信の情報量が圧倒的に増えることで、単なるテキストや動画の伝達から、体験や感情といった非言語の領域を共有することができるようになります。情報との出会い方も、企業によって作られた広告から、自分の行動に沿った自然な出会いへと変化します」(佐藤氏)

メタバース空間が生み出す新たなコミュニケーション

そして、そのカギとなるのがテクノロジーだ。リッジラインズでは、「AI」「ブロックチェーン」、そして脳の認知を表す「コグニティブ・サイエンス」の3つが重要な要素技術であると捉え、これらをプラットフォーム化し、スマートシティのインフラを開発する事業者と連携していくことを考えているという。「それによって、メタコミュニケーションを起点としたウェルビーイング(心身の幸福)な街を共につくっていきます」と佐藤氏は話す。

こうした先端テクノロジーは進化が速く、一企業で追従することが難しい。リッジラインズは自社内の調査開発リソースに、学術機関やフリーランスの開発者の力も借りて、企業の代わりにプロトタイプの開発を次々と行っていこうとしている。

トム・フロース博士
沖縄科学技術大学院大学(OIST)
身体性認知科学ユニット 准教授
ドイツ出身。現在は沖縄科学技術大学院大学(OIST)の准教授として、身体性認知科学ユニットを率い、また学術雑誌『Adaptive Behavior』の編集長を務める

とくにコグニティブの領域においては認知科学分野の学術研究者である、沖縄科学技術大学院大学(OIST)准教授のトム・フロース博士などとも連携し、人間生来の特徴を生かしたメタバース空間の利用方法やメタコミュニケーションへの展開を検討している。フロース博士によるソーシャルインタラクション(社会的相互作用)に関する調査によれば、対面と比べると、オンラインでのコミュニケーションでは相手との脳波の同期が弱まる可能性があるという。フロース博士は、情報の同期性の向上や、触覚といった新たな感覚情報を追加することで、オンラインでも対面でのコミュニケーションに近いマルチモーダルな仮想相互作用が得られる可能性を探究しているのだ。

フロース博士によるソーシャルインタラクションに関する調査によれば、対面と比べると、オンラインでのコミュニケーションでは相手との脳波の同期が弱まる可能性があるという。情報の同期性の向上や、触覚などの新たな感覚情報を追加することで、より現実でのコミュニケーションに近い存在感を体験することができる、新しいオンラインコミュニケーションの可能性を探究している
Copyright - Copyright OIST (Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University, 沖縄科学技術大学院大学). Creative Commons Attribution 4.0 International License (CC BY 4.0).

従来のメタバース空間では、視覚や聴覚からの情報を中心としたコミュニケーションに限定されていた。しかし佐藤氏は、フロース博士の調査から、新たに触覚などほかの五感を使うことで、メタバースの特徴である「同時性」を生かしつつ、人同士の自然なコミュニケーションを醸成できる可能性を見いだした。これをうまく応用できれば、テレワークの常態化など、分散型社会が進行する中で、個人の孤立を防ぎ、組織やコミュニティの一体感を確保するうえで重要な要素となりうるというのが、佐藤氏の考えだ。

新たな仮想空間であるメタバースを取り入れることで、スマートシティは魅力的で、人々が生き生きと暮らし、働ける街へと進化する。リッジラインズは人の自然な暮らしと能力を尊重しながらも、新たなテクノロジーを取り入れてその構築を推進していこうとしている。

サステナビリティが企業の事業に直結する

企業がいま直面している大きな課題の1つが、持続的な社会の実現だ。大量生産、大量消費、そして自社の利益を最優先とする時代は終わり、従業員、生活者、株主、そして地球環境も含めて、あらゆるステークホルダーのために企業は存在するものと再定義されるようになった。単なるESG投資の拡大ではなく、企業は持続可能な経営へと変革しなければならない。これは最近では「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」と呼ばれている。

リッジラインズでSX領域のコンサルティングをリードする藤川正太氏は、サステナビリティに関して企業が直面する状況をこう語る。

藤川 正太氏
Ridgelinez
Principal
Sustainability Transformation

「とくに企業に対応が求められるのは環境課題です。自然災害の激甚化や資源の枯渇が、取り組みを待ったなしのものにしています。最近では脱炭素社会の実現に向けて2050年のカーボンニュートラル実現という高い目標が掲げられていますが、これは多くの企業にとって容易に達成できるものではありません。切迫感を持って取り組まないといけない大仕事になります。また、いまではこうした環境課題への対応ができていないと、投資家からの格付けや企業との取引などに影響する可能性もあります」

さらに近頃はSNSの発達により、環境課題への対応が悪い企業のニュースは拡散しやすく、生活者の購買行動や自社の採用活動にも大きなインパクトを与えかねない。持続可能性は努力目標でなく、企業の事業そのものに直結する重要な要因となっているのだ。

顧客企業と「共同」でSXを形に

企業にとって喫緊の課題であるSXを支援するために、リッジラインズではDXコンサルティングファームとして独自の考えで事業を進めようとしている。柱となるのが、「メディア」「コンサルティング」「トランスフォーメーション」の3つだ。

中でもユニークなのは、同社が自らメディアとなってサステナビリティの情報発信を行おうとしていることだ。その理由について、藤川氏は次のように語る。

「サステナビリティに関する情報は世界中で日々アップデートされています。われわれは常にアンテナを張り巡らせて情報収集に当たっていますが、それをかみ砕いて、定期的なレポートやホワイトペーパーなどの形で情報を発信するのでは、トレンドの変化スピードに追いつくことは難しいと思っています。よって、トレンドの起点となる世界の一次情報源とのネットワークを構築した上で、そこから得られたSXの価値ある情報をタイムラグなく、メディアを通じて動画配信し、日本社会全体の意識改革にも貢献したいと考えています」(藤川氏)

活動の中心となるのはコンサルティングだ。これは最近、富士通が打ち出した新しい事業ブランド「Fujitsu Uvance(フジツウ ユーバンス)」とも連携する。「富士通の重点事業領域の多くでサステナビリティの取り組みは顔を出していて、全体では3割以上にもなります。とくにSXの構想策定や戦略策定に関わる部分では、当社の能力が生かせると思っています」(藤川氏)。

そして、実際にトランスフォーメーションを行う段階では、単なる支援にとどまらず、プロジェクトを顧客と共同で推進するスタイルに力を入れる。場合によっては自ら出資も行い、共同事業体をつくるところまで踏み込んでSXを形のあるものにしていく。

「SXの取り組みでカギを握るのはデータです。最初にお客様の企業がCO2をどれだけ排出しているかなど現状を把握することから、分析し、改善するまでのプロセスのすべてにおいてデータが必要です。パートナーと連携し、このプラットフォームをオーケストレートできるのがリッジラインズの強みとなっています」(藤川氏)

不確実な時代を生き抜いていくためには、少しでも早くサステナビリティへの取り組みを開始する必要がある。ただ、それは決して短期間で終わるものではない。取り組むうえでは、長いスパンで共に歩んでくれるパートナーを見つけることが重要だろう。

「当社は単発のプランニングではなく、事業の主体者として顧客企業と数年から10年以上の長期にわたって、伴走したいと考えています。SXのためのDXを推進するチームとしてリッジラインズに期待していただきたいです」と、藤川氏は力を込める。

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