高齢者の食事は「高カロリー」がいい意外な事情 基礎代謝は低くなってもエネルギーは消耗

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高齢になると体にどのような変化があるのか(写真:セーラム/PIXTA)
「年寄りはたいして出歩かないし運動量も低いから、あまり食べなくてもいいんだ」
「年をとると代謝が落ちてエネルギーを使わなくなるから、食べる量は少なくてもいい」
みなさんの親御さんは、食事量が落ちた言い訳に、こんな理屈を並べてはいませんか? しかし、これはとんでもない誤解です。本当は、高齢者こそしっかり食べなくてはなりません。年々歳を重ねるごとに食事量を増やし、むしろ、若者より多めに食べて、しっかりエネルギーを確保していかなくてはならないのです。
※本稿は佐々木淳氏の著書『在宅医療のエキスパートが教える 年をとったら食べなさい』から一部抜粋・再構成してお届けします。

年をとると「病気」「炎症」にエネルギーが奪われる

いったい、なぜなのでしょう。そもそも、1日に必要なカロリー(エネルギー)は、その人の「基礎代謝+運動代謝」によって算出されます。基礎代謝は、心臓を動かしたり汗をかいたり呼吸を続けたりといった、24時間体を維持するために必要なカロリーです。

一方、運動代謝は、散歩をしたり仕事をしたり運動をしたりといった、1日に体を動かすのに必要なカロリーとなります。通常、基礎代謝は高齢になると若いときに比べてかなり低くなります。また、運動代謝のほうも高齢になると落ちるのが普通です。

では、高齢者は、基礎代謝や運動代謝が落ちるのにもかかわらず、どうして多くのカロリーが必要なのでしょう。

その理由は、高齢者の場合、基礎代謝に「障害係数」をかけ算しないといけないから。障害係数とは、簡単に言えば「病気や炎症などによって消耗されているエネルギー」のこと。年をとればたいていの人はいくつもの病気や炎症を抱えているものですが、それらが知らないうちにけっこうな量のカロリーを消費してしまっているのです。

がん患者がちゃんと食べているのにやせていくのは、「がんがエネルギーをどんどん消費している」から。要するに、病気や炎症にエネルギーを取られてしまっているのです。だから、病気を抱えている人は、その分よけいに食べてカロリーを確保しなくてはなりません。

いちばんわかりやすい障害係数の例が「発熱」です。風邪をひいて36.5度から38.5度に熱が上がったとしましょう。体温を1度上げるのに必要なカロリーは約200キロカロリー。2度で400キロカロリーです。つまりこれは、400キロカロリーを熱に取られてしまっているということであり、この場合、熱に奪われた400キロカロリー分をよけいに食べて、取られた分を取り戻さなくてはなりません。

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