苦境の「プロジェクター」が工場用で見出す光明

カシオ計算機が「防塵・高精度・小型製品」で挑む

カシオの組み込み用プロジェクター。プロジェクターをロボットなど他社製品に組み込むことで新市場を切り開く狙いだ(写真:カシオ計算機)

部品にみたてた小石やレゴブロックの上にプロジェクターが映像を投影すると、ロボットが正確に物体を取り上げ、素早く仕分けしていく。

こうしたピッキングロボットが物体を認識するのに一役買っているのが小型プロジェクターだ。カメラの物体認識をプロジェクターの投影映像で手助けし、大きさ、形状がさまざまなものを正確に把握できる。従来は決められた位置に部品を置き、ロボットの認識を手助けする必要があったが、そうした手間と時間を省くことができる。

プロジェクターといえば、オフィスでの会議で資料を投影するのが主流だ。一方でカシオ計算機では、工場など製造現場での活用に力を入れている。

ピッキングロボット以外でも、人が作業する際に、作業台にガイドの映像を投影するなどの用途も広がっている。こうした用途の小型プロジェクターは19万円程度と、会議室向けなどのプロジェクターに比べ高価ではある。だが、A5サイズで重さも1キロ程度と設置場所に制約がないことがうけ、東京エレクトロンデバイスや沖電気工業などがスマート工場向けに採用している。

生き残りをかけた事業転換

プロジェクター市場は2014年の700万台超をピークに年々縮小を続けており、生き残りは厳しい。カシオも2020年11月、赤字が続いていた中型プロジェクター事業からの撤退を決めた。

市場縮小の原因は液晶をはじめとしたフラットパネルディスプレイ(FPD)の台頭だ。会議室などで使うビジネス向けがプロジェクター需要の大多数を占めるが、こうした需要は大型化と価格低下が急速に進むFPDにとって代わられつつある。

JBMIA(一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会)によるとデータプロジェクターの世界出荷台数は2019年に約600万台だったが、2020年には460万台に、2021年も500万台弱の出荷にとどまる見込みだ。台湾のBenQ(ベンキュー)などが低価格かつ高性能な製品を投入しはじめたことにより価格競争も激化している。

衰退市場に見切りをつけ、カシオが代わりに打ち出したのが小型プロジェクターへの特化だ。2021年2月に持ち運びに優れたビジネス向けの製品を、9月には製造ロボットなどに組み込んで使う製品を投入した。

また、従来の市場に成長はないなかで目をつけたのが、プロジェクションAR(拡張現実)を活用する市場だ。現実空間に映像を重ね合わせるプロジェクションARは、複数人で同時に見られるなどの利点がある。スマートファクトリーに加え、ビル内で道案内を投影するスマートビルディングなど多くの市場で成長が期待されている。

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