ニカラグアが台湾と国交断絶を宣言した意図 民主主義サミット開催日、中国によるアメリカのメンツ潰しか

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ニカラグアが突然、台湾と断交を発表したことは、中国によるアメリカのメンツ潰しという側面があるようだ(写真・Andreanicolini/PIXTA)

中米ニカラグアは2021年12月9日に1990年から続いた台湾との外交関係を解消し、中国と国交を回復させたことを発表した。ニカラグア政府は声明で「中華人民共和国こそ全中国を代表する唯一の合法的な政府であり、台湾は中国の不可分の一部である」とコメント。この断交宣言を受け、台湾の外交部(外務省に相当)は「深い悲しみを覚え、遺憾である」とする声明を発表している。

台湾は主権と尊厳を守るために、ニカラグアとの外交関係を即刻終了し、すべての協力や援助計画を中止する方針を示した。在ニカラグア大使館および同国へ派遣していた技術者チームは順次撤退する。

ニカラグアは、なぜこのタイミングで台湾断交を発表したのだろうか。その意図について、台湾の有識者は「アメリカのメンツを中国が潰したかった」ためと指摘する。

ニカラグアが台湾と断交し中国との国交回復を表明した12月9日とは、アメリカ主導で開催された「第1回民主主義サミット」の初日であった。現在、米中関係は、アメリカによる北京冬季オリンピックへの外交ボイコットが示すように、中国がやや形勢不利な状況だ。そこで中国はニカラグアと台湾の外交関係を利用し、アメリカの顔に泥を塗ることで対抗姿勢を表したというのである。

中国による民主主義サミットつぶし?

今回の民主主義サミットで「台湾の国際社会における存在感が増した」という認識を示すのは、台湾大学政治学部の陳世民副教授だ。民主主義サミットの公式サイトでは、台湾は110以上ある「国家」と並んで「民主政治体」として掲載された。つまり国家と同レベルに扱われていたのだ。しかも、ウェブサイトの表記は、台湾の正式名称である「R.O.C.(中華民国)」ではなく「Taiwan(台湾)」であった。陳副教授によると、台湾は民主主義サミットに「準国家・台湾」という身分で参加したとみることができるという。

民主主義サミットでは蔡英文総統の演説こそなかったものの、陳副教授によると、台湾はアメリカから招待を受けた1時間後には代表発言者リストを送っており、ここに「事実上の米台の暗黙の了解」が見て取れるというのだ。

一方、ニカラグアでは11月に行われた大統領選挙で現職のオルテガ大統領が事前に有力な対抗馬を拘束するなどして排除し、5度目の当選を果たしている。欧米諸国はこの大統領選挙を公正な選挙とは認めず、アメリカのバイデン大統領は「選挙は茶番」と非難し、経済制裁を科した。

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