「イカゲーム」旋風をもたらしたビジネスモデル サブスク王者・ネットフリックス急成長の20年

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2021年の世界的大ヒット「イカゲーム」を生み出した ネットフリックスのビジネスモデルと価値獲得を分析する (写真:shmakova/PIXTA)
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昨今、ビジネスにおけるキーワードとして注目されているのが「収益多様化」である。本業が伸び悩んだ今、新規事業による新たな価値づくりばかりに目を向ける動きが多いが、まず目を向けたいのは、既存事業をきちんと立て直し、収益の多様化を見据えていかに利益獲得のためのイノベーションを起こしていくかである。
2021年、世界的に最も話題になったドラマは「イカゲーム」であることは間違いないだろう。配信元は大手テレビ局や映画会社ではなく、ネット動画配信事業者のネットフリックスである。
以下では、11月に刊行された『収益多様化の戦略』の著者であり、ビジネスモデルとマネタイズの専門家である兵庫県立大学教授の川上昌直氏が、今は既存のコンテンツメーカーの地位を脅かしつつあるネットフリックスを支えたビジネスモデルとマネタイズの構造を探る。

韓国発「イカゲーム」の世界的大ヒット

韓国発のネットフリックスのドラマ「イカゲーム」が、2021年9月17日の配信開始から28日間で1億1100万世帯で視聴されたというニュースは、世界中を駆けめぐりました。アメリカを含む90以上の国と地域で視聴数1位を記録し、同社が提供する新ドラマとして史上最高記録を叩き出したのです。

『収益多様化の戦略』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

「イカゲーム」は、謎の組織に招集された多額の借金を抱える人々が、巨額の賞金を獲得すべく、生死を賭けたサバイバルゲームに挑むさまを描くドラマです。『トガニ 幼き瞳の告発』などの代表作をもつファン・ドンヒョク監督が企画、制作総指揮、演出を手がけています。

「イカゲーム」は、「ネットフリックス独占配信」に位置づけられるドラマです。同じ韓国ドラマで「愛の不時着」や「梨泰院クラス」もネットフリックスで配信されてヒットしましたが、これらは、韓国のテレビ局が製作したドラマを、ネットフリックスが放映権利を得て海外に配信しています。

しかし「イカゲーム」は、ネットフリックス側が、当初からオリジナルコンテンツとして出資し、企画から関与しています。

それゆえ、テレビ局の放送コードやスポンサーの縛りを受けないので、「ゲームに負けたら死ぬ」という際どい設定や殺人描写でも流せる、放送枠に合わせる必要がないので、1回当たりのドラマの長さはストーリーの都合に合わせてまちまちになっている、「前回の振り返り」が必要ない、などの特徴があります。

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