野口聡一「今日、僕は仕事しない」の必要性説く訳 宇宙は「究極のテレワーク」メリハリつける難しさ

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(写真提供:NASA/ZUMA Press/アフロ)
2021年5月、民間の「スペース X 」社が開発した宇宙船で宇宙へ行った初めての日本人として地球に帰還した野口聡一さん。地上から400km離れた宇宙での滞在中、野口さんは毎朝地上から指示を受けて仕事をこなしていました。それは、まさに "究極のテレワーク"。国際宇宙ステーションは、"究極の職住接近" だと話します。『宇宙飛行士 野口聡一の全仕事術』から一部抜粋・再構成してお届けします。

宇宙飛行士の業務スケジュール

国際宇宙ステーションの1日を紹介しよう。平日の国際宇宙ステーションは、午前6時の起床から始まる。60分間の朝食と30分間の身支度を済ませると、7時半には地上と当日の作業確認、いわゆるモーニングDPC(Daily Planning Conference)に入る。これが15分程度で終わると、いよいよ業務時間がスタートする。科学実験をはじめ、さまざまなミッションが目白押しの時間帯だ。

実際、実験の数は増える一方だ。わたしの1回目のスペースシャトル・ディスカバリー号の飛行時(2005年)には、わたしが担当する科学実験は5つほどだった。

ところが、今回は実に50件を数えている。テーマは物理学から医学・生物学まで、自分の専門領域をはるかに超えるものばかり。認知症に関わる遺伝因子の解明のために無重力空間での実験を行うというようなものもある。

科学実験が立て込むため、こうした平日の昼間はどうしても分刻みのスケジュールになる。計画的に仕事を進めないとトイレに行く間もないほどだ。途中、無重力による筋力の衰えを防ぐためのエクササイズも150分入る。

仕事を終えるのは、およそ午後6時。地上との締めのイブニングDPCが終わると、楽しい夕食の団らんが待っている。以後、フリータイムが続き、だいたい午後10時くらいには就寝。8時間くらいの睡眠は確保するよう心がけている。

週末の土曜日は、午前中を〝ボランタリータイム〟に当てる。宇宙飛行士の自由意思によるボランティアという触れ込みだが、実際には、やり残した実験などに当てるケースがままある。土曜日の午後はフリータイムだが、船内の清掃作業とエクササイズに費やすのが一般的。日曜日と祝日は、特段の業務が入らない限り、休日となる。

次ページ作業プランは「6カ月→2週間→毎日」の順で作成
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