TikTokのバイトダンスが「クラウド事業」に参入 アリババやファーウェイの牙城に食い込めるか

✎ 1〜 ✎ 738 ✎ 739 ✎ 740 ✎ 最新
拡大
縮小
バイトダンスのパブリック・クラウド参入は、事業部門の1つで法人向けサービスを手がける火山引擎が推進役を担う(写真は火山引擎のウェブサイトより)

中国のクラウドコンピューティング市場に「大型新人」が登場した。ショート動画アプリ「TikTok(ティックトック)」の運営企業として知られるアプリ開発大手の字節跳動科技(バイトダンス)だ。

同社の事業部門の1つで法人向けサービスを手がける「火山引擎(ボルケーノ・エンジン)」は12月2日、上海で開催したイベントでパブリック・クラウド・サービスへの参入を公式に宣言。IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)や動画・コンテンツの配信プラットフォーム・サービス、AI(人工知能)サービスなど、5分野の合計78種類のサービス・メニューを発表した。

「われわれの目標は、クラウドコンピューティング市場のメジャー・プレーヤーの1社になることだ。潜在力のある顧客との深い協力を通じて、今後2~3年のうちにモデルケースを作り上げたい」。火山引擎のトップを務める譚待氏は、財新記者の取材にそう意気込みを語った。

譚氏が社外の調査会社のレポートをもとに語ったところによれば、(クラウド・サービスを利用している)中国企業の92%は複数のクラウド・サービス・プロバイダーと契約しており、契約先数の平均値は2.6社だという。

「中国市場全体では、クラウドの普及率はまだ低い。すでにサービスを利用しているユーザーも、契約先を1社にまとめられているケースは少なく、後発組にも十分チャンスがある」(譚氏)

「一朝一夕には追いつけない」

バイトダンスの参入により、中国のクラウドコンピューティング市場で競争が激化するのは間違いない。譚氏によれば、火山引擎のクラウド・サービスのモットーは「究極の価格性能比を追求する」ことだ。しかし同時に、譚氏は「価格競争には走らない」と強調した。

だが、バイトダンスの参入は遅きに失した感が否めない。現在の中国市場では、電子商取引(EC)大手の阿里巴巴集団(アリババ)傘下の「阿里雲(アリババ・クラウド)」、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)傘下の「華為雲(ファーウェイ・クラウド)」、ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)傘下の「騰訊雲(テンセント・クラウド)」が「3強」としての地位を固め、市場全体の約6割のシェアを握っている。

本記事は「財新」の提供記事です

後発のバイトダンスが3強に割って入り、大きな市場シェアを奪取するのは並大抵のことではない。財新記者の取材に応じたアリババ・クラウドのあるエンジニアは、次のようにコメントした。

「IaaSは初期投資額が大きく、競合他社との差別化が難しいため利益率を高めにくい。(長年かけて現在の地位を築いた)アリババや競合大手の蓄積は、バイトダンスが一朝一夕に追いつけるものではないだろう」

(財新記者:張而馳)
※原文の配信は12月3日

財新 Biz&Tech

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ザイシン ビズアンドテック

中国の独立系メディア「財新」は専門記者が独自に取材した経済、産業やテクノロジーに関するリポートを毎日配信している。そのなかから、日本のビジネスパーソンが読むべき記事を厳選。中国ビジネスの最前線、イノベーションの最先端を日本語でお届けする。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT