病院倒産「2021年は最低水準」でも油断できない 多くの医療機関はこれから3つの試練に直面する

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2021年の病院の倒産件数は、過去20年間で最低の水準になる見込だ。帝国データバンクによると、11月末時点で医療機関のうち「病院」の倒産件数は1件のみ(2020年は通年で4件)となっている。

帝国データバンクの阿部成伸・情報編集課長は「病院は公共性が高い事業で、倒産が極めて少ない業種。コロナ影響による倒産も想像以上に少なかった」と解説する。コロナ関連の補助金や緊急融資で、経営の悪化が抑制されているからだといえる。

だが、病院の経営支援を行うグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの佐藤貴彦氏は「危機感を持つ病院経営者は多い」と指摘する。「今は(コロナ関連の)補助金を含めて黒字だが、医業収益が減少している病院は焦っている。補助金があるうちに、病院の機能を変えたり、病床を縮小したりとポストコロナの経営を考え始めている」という理由からだ。

実際、病院経営の「補助金頼み」は数字で見て取れる。11月24日に厚生労働省が発表した「医療経済実態調査」によると、2020年度の一般病院の1施設あたりの損益は、補助金を入れると1300万円の黒字だった。

だが、補助金を除くと2.2億円の赤字で、前年より1.2億円ほど赤字幅が拡大した。コロナ感染者数が大幅に減少する中、現在と同じ水準の補助金が続くという保証はない。病院経営者が危機感を抱くのは当然だろう。

病院を待ち受ける試練

そうした中、コロナ後に病院には大きく3つの試練が予想される。

1つ目は患者の減少や受診行動の変化だ。患者数は、受診控えや感染予防対策の徹底により減少している。2020年の一般病院の医業収益(医療行為による売上高)は、前年比で3.3%減少した。足元で患者数は回復傾向にあるものの、コロナ前の水準に戻るにはまだ時間がかかるだろう。

2つ目が補助金の減額リスクだ。医業収益に減少をカバーしていたのが、コロナ関連の補助金だ。

政府はコロナ患者受け入れのために病床を確保した病院に対して、空床に対する補償金を支給。さらに緊急事態宣言下の都道府県の病院には、1床当たり最大1950万円(重症者病床)の補助金を支給した。だが、その補助金制度が見直されようとしている。

補助金をめぐっては、受給しながらコロナ患者の受け入れ実績が乏しい病院を「幽霊病床」として批判する報道が相次いだ。厚生労働省は10月1日付の都道府県への通知で、補助金を受給する病院が「正当な理由」なく、コロナ患者の受け入れを断った場合には、補助金の支給停止や返還を命じるとした。

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