中国が密かに警戒する岸田文雄首相の台湾政策 岸田氏の対中独自色めぐり、安倍元首相との綱引きも

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外相に「知中派」として知られる林芳正議員を任命、中国は外相の訪中を招請した。2022年に向けて、岸田政権は対中政策で厳しい判断を迫られる可能性がある(写真・時事)

中国は、衆院選での善戦で権力基盤を強化した岸田文雄政権の外交政策に注目、「知中派」の林芳正外相を中国に招待した。その一方、2021年末から2022年にかけて岸田政権が判断を迫られる台湾がらみの3つの政策判断に警戒し目を凝らしている。

選挙善戦バネに独自色模索

2021年9月の自民党総裁選挙で、安倍晋三、麻生太郎の両元首相の支持で当選した岸田は当初、安倍・菅長期政権の磁場から抜け出せない「安倍亜流政権」とみられてきた。しかし2021年10月31日投開票の衆院選挙では予想以上に善戦。自民党の絶対安定多数を獲得し、政権基盤を強化した。

第2次岸田内閣では、自民党幹事長に就任した茂木敏光前外相の後任に、岸田派ナンバー2の林芳正を抜擢した。日中友好議員連盟会長(外相就任で辞任)を務めてきた林の起用に、「親台湾派」の安倍は「対中関係で国際社会に間違ったメッセージを与えかねない」と、不快感を岸田に伝えたという。

岸田は月刊「文藝春秋」2021年12月号の対談で、「自由にさせていただいていることもだんだん増えております」と述べ、独自色を出そうとする意欲を見せた。安倍が嫌がる林起用はその代表例だ。

その林外相は2021年11月18日夕、中国の王毅外相と40分に及ぶ電話会談に臨んだ。日本外務省によると林は、2022年は日中国交正常化50周年に当たるとして、「建設的かつ安定的な日中関係」の構築を主張、王毅も賛意を示した。林は次いで尖閣諸島情勢や東シナ海、南シナ海、香港、新疆ウイグル自治区などに対し深刻な懸念を表明、「台湾海峡の平和と安定の重要性」も提起した。

林は2021年11月21日の民放のテレビ番組で、この電話会談で王から訪中を招請されたと明かし、日程は決まっていないが「(訪問時期などを)調整していく」と述べた。番組で林は、「米中両方と話ができるのが日本の強みだ」とも述べ、対中外交に意欲を見せた。

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