異文化に触れる日本人が陥りがちな3つの誤解 国は幅広すぎる、意見は言って相手を受け入れよ

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有意義な異文化コミュニケーションを成立させるために(写真:Fast&Slow/PIXTA)
グローバル舞台で活躍する人材に求められていることはさほど変わらない。英語でコミュニケーションを計る人と異文化を理解する人。しかし、忙しいビジネスパーソンは主に英会話とTOEICやIELTSなどの試験のために勉強をするため、異文化の理解にはなかなか時間を費やせない。そこで、簡単な解決方法を紹介する異文化コミュニケーションのハウツー本が書店にあふれている。
しかし、その本にわかりやすく、すぐ実践できるコミュニケーション手法が紹介されていても、時代遅れであり、誤解を招く知識も多く含まれている。『哲学者に学ぶ、問題解決のための視点のカタログ』の共著者の1人、スティーブ・コルベイユ氏が特に注意すべき3つの誤解を取り上げ、時間がない人でもグローバルコミュニケーターになれる方法を紹介する。

1. 国はすべてだ!

国の文化を知り、国民を知る。海外出張や海外転勤の前に行き先の文化に関心を持つべきだということは誰も否定できない。まず、英語で言うと3Fs、つまりFood(食べ物)、Flag(国旗)、Festival(祭、行事)について当たり前のように調べる。時間があれば、言語を学び、その国の歴史や文学などに触れる。

以上の最低限の下準備さえすれば、海外での仕事が効率的に進むと信じる。また、同僚と仲良くなり、現地での友達作りの期待をするのも不思議ではない。しかし、相手の母国に関する知識は必ずしも有意義なコミュニケーションを成立させ、絆を紡ぐカギとはならない。でも、なぜこの常識は誤っているのだろう。

まず、どこの文化も複雑すぎるため、根本的理解は困難である。この記事を読んでくれる日本生まれ、日本育ちの読者はおそらく「日本文化がわかる」と断言できないであろう。カナダに生まれた拙者はなかなか故郷の本質を説明しきれない。

そして、「地球村」の時代はわれわれはビュッフェ形式で諸国の文化生産物をピックアップし、自分のアイデンティティーを構築する。ネットを通して、国境を気にせず、好きなメニューを作る。前菜にK-POP、アメリカン映画はメインディッシュ、デザートでアニメ。外交、戦争、マクロ経済、社会問題の話をするときには国単位で考える必要性が残っている。しかし、2人あるいは数名しか参加しない会議やプライベートのコミュニケーション場面では、国の意識がそれほど重要ではない。

その理由は、自分も相手も、会社・組織の代表と言える場合があるものの、外交官ではない限り自国の代表であるはずがない。この論点を理解するために他国に長期滞在していることを想像してみるといい。最初は自分の国籍のことをよく考え、新しい国と自分の中にある「日本」とを比較する。

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