中国で「外資系ブランド」が岐路に立たされる訳 成長鈍化の中国・自動車市場で生き残るには?

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マツダが中国で販売する「CX-4」(写真:マツダ)

台湾自動車大手の裕隆汽車(ユーロン)は2021年11月、中国大手自動車メーカーの東風汽車(ドンフェン)との合弁企業、東風裕隆汽車の再編を行い、中国での完成車事業を撤退した。

また、韓国・起亜自動車(キア)と東風汽車の合弁企業である東風悦達起亜汽車の販売不振により、東風汽車が保有する合弁企業の全株式を売却すると報じられた。

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アフターコロナの中国では、消費志向の変化により、自動車市場の競争が一層激しくなっている。予算に合わせてブランド・機能などから購入車種を真剣に検討する消費者が増加しているのだ。

また、車載半導体不足の影響に加え、減産を余儀なくされる自動車メーカーも増えてきている。

昨年まで3年連続でマイナス成長となった中国自動車市場は、2021年には回復に転じたが、勢いは弱く、新車販売台数は前年比3%増の2600万台となる見通しだ。

かつての「作れば売れる」と言われた時代に成長してきた外資系メーカーが分岐点を迎え、日系を含む外資系ブランドの明暗が分かれてきている。近年、ブランド力が低下している韓国系、ドイツ系以外のヨーロッパ系メーカーの苦戦が目立つ。

シェア急減のヒュンダイ、ピークから約8割減のジープ

韓国の現代(ヒュンダイ)・起亜グループは、中国で北京現代、東風悦達起亜の合弁企業2社を展開し、グループ生産能力は250万台に上る。

しかし、2016年に179万台の販売台数を記録したあと、在韓米軍の終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に対する中国の反発をきっかけに、中国事業は長年低迷し、新車投入や販売戦略も他社に比べ後れを取っている状況だ。

同グループの2020年の販売台数は66万台にとどまっており、2021年は1~9月期で前年同期比22%減の37万台と、通年で50万台に届かない水準だ。中国乗用車市場でのシェアは2016年時点で7.4%だったが、2021年1~9月は2.5%に落ち込んでいる。

そんな中で、北京現代の北京第1工場は、2019年4月に稼働を停止し、新興EVメーカーの理想汽車(リ・オート)に売却した。また、北京第2工場や江蘇省常州工場の売却も視野に入れ、余剰生産能力の解消を図ろうとしている。

欧米大手自動車メーカーのステランティス(PSAとFCAの合弁)と、広州汽車(GAC Motor)の合弁企業である広汽FCAは、2021年8月に広州工場を閉鎖し、生産ラインを長沙市に移転する予定だ。

ジープブランドでは、コンパクトSUVの「レネゲード」などを現地生産している(写真:Stellantis)

広汽FCAは、2015年に中国で「ジープ」ブランド車の生産を開始し、長沙・広州工場の年産能力は計32万8000台に上る。

しかし、2020年の販売台数はわずか3.8万台にすぎず、ピークの2017年(22万台)比で約8割減少した。今年1~10月には、前年同期比46%減の1.7万台まで落ち込んでいる。

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