岸田政権「PCR検査無料化」気がかりなポイント 誰でも自由にタダで受けられるわけではない?

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新型コロナウイルスのPCR自主検査完全無料化は実現するのだろうか(写真:ブルームバーグ)

11月12日、新型コロナウイルス感染症対策本部は「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」を発表した。岸田首相も出席して決定された施策の1つが、新型コロナウイルスのPCR自主検査を完全無料化する事業案だ。安倍・菅両政権でも実現に至らなかった“不可侵領域”でもあり、岸田新政権にとって国民への大きなアピールとなりそうだ。

しかし実際、どれだけ実効性が上がるのか。まだ構想段階だが、気がかりな点がいくつもある。

無料で受けられるのはごく限られた人?

最も気になるのが、「無料化」の対象となる人の範囲が不明確な点だ。

これまでPCR検査は、次の2つの場合に限って無料で行われてきた(検疫を除く)。

A.症状のある人が医療機関を受診し、医師が必要と認めた場合に保健所が行う「行政検査」

B.内閣官房が事前登録した事業所・大学等の無症状者に実施している「モニタリング検査」(2021年2月~、1都1道2府10県)

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Aはよく知られていると思う。他方、Bは初めて聞いた人も多いだろう。内閣官房の特設サイトによれば、1日あたりのモニタリング検査数は、10月初旬頃には平均約1万件に達したが、ここ1カ月ほどは約6000件程度で推移している。対象は団体単位で事前登録した人に限られ、すでに募集は締め切られている。

6000~1万件と聞くと、なかなか健闘しているようにも見える。だが、日本の総人口1億2584万人を分母にすれば、0.0077%(10万人あたり7.7人)だ。例えば、人口90万人超の世田谷区で特定の事業所・大学から70人を調べたところで、流行の兆候をつかめるはずがない。

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