いつもの薬「もらうだけ通院」は日本で減らせるか 繰り返し使える「処方せん」の実現可能性

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毎月、同じ薬をもらうためだけに通院するのも手間がかかります……(写真:IYO/PIXTA)

毎月、同じ高血圧の薬だけをもらうために通院している。同じ病気で、受診しても簡単なお話と「いつものお薬出しておきますね」という会話だけで終わってしまう。

同じ手間の繰り返しなのだから、いつもの薬の「処方せん」が何度も使えればいいのに――。そう感じたことのある人は少なくないのではないでしょうか。

現実味を帯びる処方せんの反復利用

こんな状況を解消する、「リフィル制度」が最近になって現実味を帯びています。これは、一定期間内に処方せんを反復利用できる、というのものです。

リフィル(Refill)は、詰め替え品やおかわりを意味する言葉です。リフィル制度は、受診回数や年間1000億円分以上とも推計される残薬(出典)の削減による医療費抑制という観点から検討されてきましたが、これまで日本医師会等の反対表明もあり、実現しませんでした(出典)。受診回数が減れば、病院側は患者さんの状態悪化に気づく機会が減りますし、病院側の収益の減少も懸念されますから、そう簡単に受け入れられるものではないでしょう。

ところが、今年5月21日の財務省の財政制度等審議会で、気になる動きがありました。財政健全化に向け、「長期処方について、依存性の強い向精神薬については抑制するなどのメリハリは付けつつ、患者の通院負担の軽減や利便性向上の観点から、病状が安定している患者等について、一定期間内の処方箋を繰り返し利用することができる制度(リフィル制度)の導入を令和4年度(2022 年度)から図るべき」との提言がなされたのです。(出典

また、6月18日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2021」の原案では、「症状が安定している患者について、医師及び薬剤師の適切な連携により、医療機関に行かずとも、一定期間内に処方箋を反復利用できる方策を検討し、患者の通院負担を軽減する」と明記されました。(出典

骨太の原案では、導入年度やリフィル制度という文言は明示されなかったものの、財務省からの提言ということもあり、将来の現実化への見込みが強まったと考えられます。

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