移民は地元住民の「雇用」を奪うことはないのか

ノーベル経済学賞のD.カード氏の研究に迫る

今年は3人の経済学者がノーベル経済学賞を受賞した(編集部撮影)
今年のノーベル経済学賞受賞者は、カリフォルニア大学バークレー校のデビッド・カード教授、マサチューセッツ工科大学のヨシュア・アングリスト教授、スタンフォード大学のグイド・インベンス教授に決定した。
労働経済学の分野へのカード氏の貢献について、同氏の孫弟子に当たる東京大学の近藤絢子教授に聞いた(最低賃金と雇用の研究成果を解説した前編はこちら)。

 

──デビッド・カード氏は最低賃金と雇用の研究のほかに「移民が大勢やってきたら、街の経済に影響を与えるか」という研究を行ったと。いかにも論争になりそうなテーマです。

1980年に、アメリカのマイアミに大勢のキューバ移民が押し寄せたことがありました。その状況は、やはり「自然実験」的なショックとして捉えることができます。

カード氏は、押し寄せた移民がその地域で就労すると、元から住んでいたアメリカ人の雇用に悪影響があるのかどうかを実証しました。

需要と供給が交差するところで雇用と賃金が決まるモデルを想定すると、移民の影響で労働供給が増えたときには、賃金が下がるか失業者が出ることになってしまう。ところが実際は、元から住んでいたアメリカ人の雇用や賃金にはあまり影響がなかったようだ、という結果が出たのです。

つまり、移民を受け入れたからといって、必ずしも地元経済や雇用に悪影響が出るわけではないということを示しました。

──地元の人は従来どおり働き、さらに移民の人たちも仕事をするようになって街が活気づいたのであれば、共存共栄ですね。

ただ、やはり、労働者は安く雇える移民に置き換えられ、地元の労働者は割を食うという主張をする人との大論争になりました。

移民問題は今日的なテーマですが、非常に難しい問題でもあります。印象に残っているのは、私がアメリカで大学院生だったとき、指導教員から、「なるべく、移民の話は触らないほうがいいよ」と言われたことです。「すごく興味があって、どうしてもやりたいんだったら止めないけど、よくわからない人が首を突っ込まないほうがいい」と。

──分析自体が難しいということでしょうか、それとも若い研究者や留学生が扱うにはあまりに政治的なテーマということでしょうか。

>>インタビューの続きはこちら

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ノーベル経済学賞のD.カード氏の研究に迫る①
論争を巻き起こした「最低賃金」と雇用の関係

ノーベル経済学賞のD.カード氏の研究に迫る②
移民は地元住民の「雇用」を奪わないのか?

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