日本人が自民党だけを選び続けてきた2つの理由 田原総一朗が振り返る国民と自民党の関係

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ジャーナリストの田原総一朗氏が自民党長期政権の本質に迫る(写真は2018年、撮影:尾形文繁)
第49回衆議院議員総選挙が近づいてきた。
「日本では政府がいくら批判されても、自民党に代わって、政権を奪う力のある党がない。そう思うから自民党議員たちにも緊張感が生まれない。国を動かす議員たちに緊張感なくして、国民には緊張感を持てというのか──」
なぜ日本人は自民党だけを選んできたのか。ジャーナリスト・田原総一朗氏の新刊『自民党政権はいつまで続くのか』より、一部を抜粋・再構成してお届けする。

自分の身体に合わせた洋服をつくるのは上手ではない

国民の多くは、なぜ自民党政権をこれほど長期間支持し続けているのだろうか。その要因について僕は、次の2つだと捉えている。

1つは、安全保障である。

実は自衛隊が創設されたのは、1954年で、自民党が発足したのが、1955年である。

憲法では9条2項で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と書いてあるが、自衛隊は戦力も交戦権を有していて、明らかに憲法と矛盾している。

そこで、自民党の初代首相、鳩山一郎は、「自主憲法」をつくるべきだと主張し、実現はできなかったが、岸信介首相も憲法改正を強く訴えた。

ところが、それ以後の池田勇人、佐藤栄作の両首相とも、憲法改正を全く考えていないようだった。そこで1971年の秋に、自民党きっての頭脳派で、ニューライトの旗手的存在であった宮澤喜一氏に、強引に頼み込んで会ってもらった。

池田・佐藤両首相は、憲法改正を考えていないようだが、言わば矛盾を封じ込めて、国民をごまかしているのではないか。なぜ池田首相以後、姿勢を豹変させたのか。そのことを宮澤氏に問いたかったのである。

すると宮澤氏は、いささかのためらいもなく、やわらかな口調で話しはじめた。「私はね、日本人というのは、どうも自分の身体に合わせて洋服をつくるのは上手ではない。下手だと思うのですよ」

それはどういうことなのか。

僕が問うと、宮澤氏は、満州事変、日中戦争、太平洋戦争などの話をした。

自分の身体に合わせた洋服をつくろうとすると、軍が突起して政治を抑え込んでしまう。

五・一五事件で犬養首相が軍によって殺され、二・二六事件では、政府幹部が軍によって殺された。いわばクーデターである。

こうして、軍が主導して、勝てるはずのない太平洋戦争に突入して惨憺たる敗北を招いてしまった。

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